平成という時代を経て夫婦共働きがあたりまえの時代になりましたが、この大きな世の中の動きにもかかわらず昭和の基準を引き継ぎ続けたまま令和にやってきたのが「夫婦共同扶養の場合における扶養認定基準」でした。
改正に至る背景
平成の終わりに提出され、令和に入って可決した「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」の附帯決議には、下記の表記がありました。
九 年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定すること。
夫婦共働きがあたりまえとなり、その年収水準も徐々に格差がなくなっていき、夫婦が同じくらいの水準の収入である場合に、その子どもは夫婦どちらの健康保険に加入するべきなのかという問題が、平成の時代に徐々に多くなり顕在化していきました。
この付帯決議を読むと「保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることが少なからず発生していた」ということがわかります。このようなことをなくすために、明確な基準を策定せよと国会で決まったのが令和元年でしたが、それから2年の年月を経てようやくこの度その通知が発出されました。
・夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について (令和3年4月30日 保保発 0430 第 2 号 保国発 0430 第 1 号)
基本的な扶養認定の考え方(過去から未来へ)
資料は通達本文と新旧対照表にわかれていますが、4ページ以降の新旧対照表をご覧になった方がわかりやすいでしょう。
改正前 | 改正後 | |
年間収入 | 前年分の年間収入 | 過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの |
具体的にどう算出して見込むのかが不明な点はありますが、少なくとも過去だけで判断することはやめて、未来志向へと変わったことはわかります。これを比較して多い方の被扶養者になる、というのが基本的な考え方です。
「将来の収入等」の「等」に一体何を含めていいのかもよくわかりません。もしかすると適用日までにさらにQ&Aみたいなものが公表されるかもしれません(されない場合はあらかじめご了承ください)。
年間収入が同程度の場合
年間収入を比較して同程度の場合は、考え方が異なってきます。しかし、同程度とはどの程度までを指すのかは不明確でした。
改正前 | 改正後 | |
主として生計を維持する者の被扶養者とする場合 | 年間収入が同程度 | 年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内 |
この要件に該当する場合は、単純に収入が多い方とするわけではなく「主として生計を維持する者の被扶養者とする」ことに変わりはありません。しかし、「主として生計を維持する者」をどう判断するかについては不明確なままとなっています。
その他
一方が国民健康保険の被保険者の場合や、主として生計を維持する者が育児休業を取得した場合などについての考え方が新たに示されています。
適用日
令和3年8月1日からの適用となります。
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