給与のデジタルマネー払い解禁に向けた検討①

2021年5月10日 | から管理者 | ファイル: 労働基準法.
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いわゆる「給与デジタル払い」と言われる、給与をデジタルマネーのアカウントに送金することを解禁する検討が、厚生労働省の労働条件分科会で行われています。

・厚生労働省 労働政策審議会労働条件分科会

具体的な議論は、令和3(2021)年1月28日から始まったばかりですが、今春にも解禁されるという報道が見受けられました。
いくら法改正が必要のない改正事項(=労働基準法の改正は必要なく労働基準法施行規則の改正によって可能となる)とはいえ、3ヶ月程度で具体的なところまでの議論は不可能なのではないかと思っていましたら、やはり4月になって、今春の導入は断念され21年度内(できる限り早期に)という導入方針が改めて示されました。

そもそもの源流

直近の議論は多様となっていますが、もとはといえば平成30(2018)年に遡ることとなります。

・内閣官房 未来投資戦略2018

この資料の136ページに下記のような記載があります。

銀行口座の開設が難しい外国人労働者への賃金支払を円滑化する観点から、賃金の確実な支払などの労働者保護に十分留意しつつ、現行認められている銀行口座及び証券総合口座以外の口座への賃金支払(資金移動業者が開設する口座への送金)の導入可能性について検討を行う。

ポイントは下記3点になるでしょう。
①銀行口座の開設が難しい外国人労働者への賃金支払を円滑化する
②賃金の確実な支払などの労働者保護に十分留意
③現行認められている銀行口座及び証券総合口座以外の口座への賃金支払
以上のことを、国家戦略特区区域に限定して行ってみてはどうか、ということです。わずか3年前のことですが、何となく牧歌的な雰囲気も漂います。

銀行口座の開設が難しい外国人労働者への賃金支払

なぜ、外国人は銀行口座開設が難しいのか、知り合いの金融機関の方に聞いてみましたら、数年で母国に帰ることが前提であるとその後休眠口座になる可能性が高く、その管理の事務負担は少なくないとのことです。
いずれにしても、そもそもの必要性は、銀行口座が持てない外国人のため、そして外国人を雇用する給与を支払う側の企業の事務負担を考慮して、現金の支払い以外の手段があってもよいのではないかというのが出発点です。

賃金の確実な支払などの労働者保護に十分留意

労働条件分科会において、議論のポイントとなっているのがまさにこの点です。
銀行であれば破綻した場合のリカバリーのしくみがすでに確立していますが、スマホ決済型のデジタルマネーを提供する資金移動業者については、銀行ほどのレベルのしくみが確立していない。このままで解禁することはできず、どのような要件を満たせば解禁できるのか、その具体的なしくみについての議論が慎重に行われているのは当然のことのように思います。

現行認められている銀行口座及び証券総合口座以外の口座への賃金支払

3年前の時点では、「デジタル払い」や「デジタルマネー」といった具体的な文言は見受けられず、「…以外の口座」という消極的な、抽象的な書かれ方がされています。

筆者も3年前に小欄で下記のような記事を書いていますが、まだ具体的なイメージができていませんでした。

「スマホに給与振込」が可能に?

未来投資戦略2018が公表された平成30年前後に、○○ペイといったサービスが次々とリリースされ、その後コロナ禍を経てキャッシュレス決済サービスなどのデジタルマネーが急速に普及していきました。

(つづく)

訂正 表題を「給与の電子マネー送金解禁に向けた検討」としていましたが、現行に修正を行いました。これに伴い、本文中の表現を一部修正しています。用語の定義が確立しておらず、なかなか悩ましいですが、より正確な表現に努めてまいります。

 

 

 


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