「裁量労働制の拡大」が法案から削除される件

2018年3月3日 | から管理者 | ファイル: 労働基準法.
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今国会で提出される予定だった働き方改革関連法案から「裁量労働制の適用拡大」の項目が削除されるというニュースが話題となっています。

経緯を振り返りますと、働き方改革関連法案は、昨年(平成29(2017)年)9月に法律案要綱(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱)が公表され、9月下旬に召集される予定だった臨時国会に提出される予定でしたが、ご存知のとおり、突如解散総選挙が行われることなったため、法案の提出は先送りされました。

報道されているとおり「裁量労働制の適用拡大」という改正は、上記法律案要綱で初めて入った項目ではなく、平成27年の時点で提出されていた別の法案である「労働基準法等の一部を改正する法律案」に盛り込まれていました。
このため、働き方改革法案としてはまだ提出されていない状況であるにもかかわらず、「3年間もたなざらし」「3年前から不適切データが使用されていたのではないか」といった報道がなされているわけです。

主な改正項目を整理すると下表のとおりとなります。

平成27年提出時法案 働き方改革関連法案
時間外労働の上限規制
同一労働同一賃金
年次有給休暇の時期指定義務
フレックスタイム制の見直し
裁量労働制の適用拡大
高度プロフェッショナル制度の導入
中小企業に対する割増賃金率の適用猶予措置の廃止

平成27年4月に提出された労基法改正法案は、「残業代ゼロ法案」との批判があったことなどもあり、審議が進まないままとなっていました。
一方、平成28(2016)年9月から行われた働き方改革実現会議を経て、平成29(2017)年3月にまとめられた働き方改革実行計画に基づき、「時間外労働の上限規制」など新たな改正項目が出てきました。
すでに提出されていた平成27年改正法案とは別に、これらの新たな改正項目をまとめた法案を新たに作成する方法もあったと思いますが、厚生労働省はその後の審議会を経て、これらの改正項目を一つにまとめた法案として、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」を公表したというわけです。

以上の経緯を理解しておかないと、一連の報道などを理解する際に多少混乱が生じてしまうかもしれません。


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