緊急事態宣言に基づく休業要請と休業手当の支払義務

2020年4月8日 | から管理者 | ファイル: 労働基準法.
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令和2(2020)年4月7日付にて、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が官報に公示されました。

・令和2年4月7日付官報(特別号外第44号) 「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示」

宣言を受けて、都道府県知事が様々な要請、措置を行うことができるようになりますが、「外出自粛の要請」(法第45条第1項)と「施設の使用の制限等の要請(=休業要請)」(法第45条第2項)とを明確に分けて考えなければならないようです。

4月7日の時点で、4月8日以降の休業を決め、すでに公表した商業施設も多数あるようですが、これは法的根拠を持った「外出自粛の要請」を受けて、営業自粛の判断がなされたということになります。

施設の使用の制限等の要請(=休業要請)

一方で、「施設の使用の制限等の要請(=休業要請)」については、東京都の対応案が公表されたもののまだ決定がなされておらず、また、他の都道府県については、当面行わない方針を示したところもあります。

法第45条第2項に基づく「使用の制限等の要請の対象となる施設」が施行令第11条に掲げられています。

(使用の制限等の要請の対象となる施設)
第十一条 法第四十五条第二項の政令で定める多数の者が利用する施設は、次のとおりとする。ただし、第三号から第十三号までに掲げる施設にあっては、その建築物の床面積の合計が千平方メートルを超えるものに限る。
一 学校(第三号に掲げるものを除く。)
二 保育所、介護老人保健施設その他これらに類する通所又は短期間の入所により利用される福祉サービス又は保健医療サービスを提供する施設(通所又は短期間の入所の用に供する部分に限る。)
三 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する大学、同法第百二十四条に規定する専修学校(同法第百二十五条第一項に規定する高等課程を除く。)、同法第百三十四条第一項に規定する各種学校その他これらに類する教育施設
四 劇場、観覧場、映画館又は演芸場
五 集会場又は公会堂
六 展示場
七 百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗(食品、医薬品、医療機器その他衛生用品、再生医療等製品又は燃料その他生活に欠くことができない物品として厚生労働大臣が定めるものの売場を除く。)
八 ホテル又は旅館(集会の用に供する部分に限る。)
九 体育館、水泳場、ボーリング場その他これらに類する運動施設又は遊技場
十 博物館、美術館又は図書館
十一 キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホールその他これらに類する遊興施設
十二 理髪店、質屋、貸衣装屋その他これらに類するサービス業を営む店舗
十三 自動車教習所、学習塾その他これらに類する学習支援業を営む施設
十四 第三号から前号までに掲げる施設であって、その建築物の床面積の合計が千平方メートルを超えないもののうち、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等の発生の状況、動向若しくは原因又は社会状況を踏まえ、新型インフルエンザ等のまん延を防止するため法第四十五条第二項の規定による要請を行うことが特に必要なものとして厚生労働大臣が定めて公示するもの
2 厚生労働大臣は、前項第十四号に掲げる施設を定めようとするときは、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない。

ここで重要なのが、施設の広さです。冒頭の各号列記以外部分の下線青字のところに第3号以降は床面積が1000㎡を超えるという限定がなされています。1000㎡と言われてもすぐにイメージができませんが、野球のグラウンドの内野部分よりも少し広いくらいのイメージのようです。
この施設の広さの要件が明記されないまま東京都の対応案が報道されてしまったため、例えば「理髪店」は休業要請対象施設なのかといった混乱があったようですが、床面積1000㎡を超えるような理髪店であれば対象になるが、多くの理髪店は床面積1000㎡以下でしょうから対象になるはずがないと整理されるようです。

床面積1000㎡以下でも対象になる可能性のある施設

しかし法律というのはそうは問屋が卸さないというところがあり、一方で第14号(青字部分)には、床面積1000㎡以下であっても別に定めた施設は対象になりますよ、ということが書かれています。
ではこの「厚生労働大臣が定めて公示するもの」はどこにあるのかというと、4月7日付の官報で公示されていました。

・令和2年4月7日付官報(特別号外第45号) 「新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するため新型インフルエンザ等対策特別措置法第四十五条第二項の規定による要請を行うことが特に必要な施設」

一部を抜粋すると、下記のようなことが書かれています。

…同号に掲げる施設は、同項第4号から第6号まで、第9号及び第11号に掲げる施設であって、その建築物の床面積の合計が1000㎡を超えないものとする。

すなわち、下線赤字の施設については、床面積1000㎡以下であっても、都道府県によっては対象になる可能性があるということです。第14号には、

…新型インフルエンザ等の発生の状況、動向若しくは原因又は社会状況を踏まえ、…

とありますので、公示された施設においてはこれまでいわゆるクラスターの発生が確認され、今後もそのようなおそれがあるということで公示されたものと思われます。

休業手当の支払義務について

さて、前段が長くなりましたが、本題は、都道府県知事から施設の使用の制限要請が行われた場合に、企業は、労働基準法第26条に基づく休業手当の支払義務があるのか否かという点についてです。

この点につき、一部報道では、このようなケースは休業手当の支払義務の対象外となるといった内容が報道されていましたが、4月7日の厚生労働大臣の会見において、見解が示されました。

・厚生労働省 「加藤大臣会見概要 (令和2年4月7日(火) 9:33 ~ 9:48 ぶら下がり)」

長いため結論部分のみ抜粋すると下記のとおりです。

…宣言がなされ、個々の施設の使用自粛がなされたからといって、直ちに一律に休業手当を支払わなくても良いということにはならないということであります。…

実はこの見解は、すでに小欄でもその更新状況を随時お伝えさせていただいている「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(4-問1)おいて示されている見解そのままであり、

…本件については、これまでのQ&Aでも基本的考え方はお示しをし、国会でも答弁したところでありますけれども、今般の非常事態宣言、またその中で施設の使用自粛等がなされていること等を想定して、Q&Aを直ちに作って皆さんにお示しをさせていただきたいという風に考えています。

とのコメントもなされています。
じきにQ&Aの更新がなされるようですので、その都度対応してまいります。

 

追伸(令和2年4月9日)

緊急宣言が出た区域の知事が、多くの人が利用する施設の使用停止などを要請できるとする、法45条2項に基づく施行令で定める範囲内の要請をご紹介しました。
その後国と東京都の調整で、緊急事態宣言が出ていなくても知事が団体や個人に協力を要請できると定めた法24条9項に基づく要請が行われることとなったようです。

9 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。

こちらはついては、45条2項に基づく要請と異なり、施行令などによる対象範囲の限定はなく、かなり抽象的な内容の条文になっています。


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