標記の件については、小欄下記記事にて取り上げさせていただきましたが、
・平成31(2019)年4月12日付 「扶養異動届の押印などが省略できることとなるかもしれない件(協会けんぽの場合)」
この間の経緯をお知りになりたい方はまずはこちらの記事をご参照ください。
変更の施行日
これらの取扱いの変更ですが、
なお、この取扱いについては、平成31年9月1日までは、なお従前の例によることができるものとする。
との記載があったことから、実際に施行されるまでにはもう少し時間がかかるのではないかと想像していましたら、ゴールデンウィークを挟んで、日本年金機構のWebサイトに下記案内が掲げられていました。
・日本年金機構 「【事業主の皆様へ】届出等における添付書類及び署名・押印等の取扱いの変更について」
具体的にいつから変更になったという文言は見当たらないのですが、遅くともこの記事の更新日である5月7日からは施行されていると受け止められると思います。
全国にわたる運用のマニュアルなどを改訂したりしないといけないはずなので、迅速な対応だったと推察します。
扶養異動届とは何か
今回の取扱いの変更の中で、扶養異動届の本人署名が省略することができることとなる件が実務的に影響が大きいわけですが、そもそも扶養異動届とは一体何か、ということについて考察してみたいと思います。
〇健康保険法施行規則
第38条 被保険者は、被扶養者を有するとき、又は被扶養者を有するに至ったときは、五日以内に、次に掲げる事項を記載した被扶養者届を事業主を経由して厚生労働大臣又は健康保険組合に提出しなければならない。
一 被扶養者の職業、収入、住所、氏名、性別、生年月日、個人番号(個人番号を有する者に限る。)及び被保険者との続柄
二 被扶養者が被保険者の直系尊属、配偶者、子、孫及び兄弟姉妹以外の者であるときは、同一の世帯に属した年月日及び扶養するに至った理由
改めて条文を確認しますと、扶養異動届は、事業主ではなく、被保険者本人に提出義務が課せられている、ということです。
これは当然と言えば当然なのですが、従業員の家族に諸々の変更があることは、企業はすべてを把握できないからですね。
また「五日以内」という制約はなかなかしんどい場合がありますが、ここに書かれているのが根拠です。
そして、誰が書く(入力する)のか
したがって、被扶養者異動届という届出書の作成主体はあくまでも被保険者本人にある。本人が記入し、捺印する。または、本人が自筆で記入していれば、捺印は省略できるという取扱いをこれまでも行ってきた保険者もあります。
しかし以上は建前で、本人が書くと書き間違えるから、書類のやり取りに時間がかかるから、本人に任せておくといつまで経っても書類が出てこないから、といった様々な理由から、扶養異動届を本人ではなく、企業の人事総務担当者が書いたり、その委託を受けて社会保険労務士が書くということは実務的には広く行われてきました。
このようなケースにおいては、今回の取扱いは朗報であり、本人に捺印をいただく手間がなくなった、電子申請の場合は委任状を書いていただく必要がなくなった、ということになります。
一方で、原則どおり、扶養異動届は本人が書くものである、という運用をしている企業もあります。こういった企業の場合は悩みどころで、今回の取扱いに沿うとすると、作成主体が本人から企業側へ移る可能性があるからです。
もちろん、保険者が対応していない場合は従前どおりとなり悩む必要がないのですが、ワークフロー(本人が家族情報の変更など各種社内届出を入力するシステム)を導入している企業にとっては、作成(入力)主体を本人のままで運用を効率化できるため、電子申請化を含め、この取り扱いのさらなる広がりが期待されるところです。
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