健康保険料と国民健康保険料の二重払い問題

2019年5月22日 | から管理者 | ファイル: 健康保険法, 国民健康保険法.
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健康保険の被扶養者要件を原則として国内居住者に限ることとするなどの改正を含む改正健康保険法が本日付の官報にて公布されました。

・令和元(2019)年5月22日付 医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律

今日はこの中でやや細かな改正ではありますが、健康保険料と国民健康保険料の二重払いを解消する改正についてご紹介させていただきます。

未適用事業所問題

企業等は、法律の要件を満たした場合に健康保険・厚生年金保険に加入しなければなりませんが、加入の届け出を怠っているケースがあります。また、企業等としては適用されているが、加入要件を満たしているにもかかわらず資格取得の届け出を怠っているパート・アルバイト等がいるケースもあります。
このような事情で健康保険に加入できない方は、個々人で国民健康保険に加入する手続を行い、国民健康保険料を支払っているわけです(家族の扶養に入れるような場合等を除く)。

厚生労働省・日本年金機構はこのような事態に対して健康保険への加入の勧奨や指導を行っていますが、その際、最大2年間遡及して加入手続をしなければならないケースも見受けられます。
この際、その対象となった従業員からすれば、国民健康保険から健康保険に切り替えることとなるわけですが、2年間さかのぼって健康保険に加入するのはわかったけれど、当然、この間支払った国民健康保険料を返してほしい、ということになります。
ところが、そうは問屋が卸さないのが法律の世界です。

二重払いとなる例と救済のあっせん

詳しい説明は長くなるため割愛しますが、還付されるのは「直近2年分」ではなく「直近2年度分」であるということから、時期によって還付されない部分が出てくるということです。詳しくは下記資料をご参照ください。

・平成30(2018)年7月18日 「健康保険料と国民健康保険料の二重払いの解消(概要)-行政苦情救済推進会議の意見を踏まえたあっせん -」 総務省行政評価局

役所からすれば、法律の規定(国民健康保険法第110条の2)がそうなっているのだからお返しできない、ということなのでしょう。

改正の内容

上記あっせんの資料が公表されたのが昨年の7月ですので、かなり迅速な対応がなされたと言えるでしょう。今回の改正で、国民健康保険法第110条の2に第2項が加えられ(上記官報のページで言うと11ページの下段)、

被保険者の責めに帰することのできない事由によって被保険者に関する医療保険各法との調整が生じた場合は、2年を経過していても、調整に必要と認められる期間行うことができる。

といった内容が書かれました。

施行日と経過措置

施行日は、改正法の公布の日(令和元年5月22日)とされていますので、本日から施行されています。
また、経過措置が設けられており、110条の2が設けられた平成27(2015)年4月1日まで遡及して適用することとされています。


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