「勤務間インターバル」等の努力義務化
表題をご覧になって、いわゆる「勤務間インターバル」制度のことだろうとお感じになった方は少なくないでしょう。
この制度は、働き方改革法のうち労働基準法の改正ではなく、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」という地味な法律の改正により努力義務として位置づけられることとなりました。
法律を見ますと、例によって「勤務間インターバル」という言葉は見当たらず、第2条に、
健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定(…中略…)を講ずるように努めなければならない。
という表現が追加されていることから、これが「勤務間インターバル」のことを指しているのだろうなということは把握できます。
ある特定の用語が使われない局面と使われる局面
「例によって」と書きましたのは、こういったことはよくあることで、例えば、「フレックスタイム制」や「セクシュアルハラスメント」、今回労基法の改正により追加される「高度プロフェッショナル制」なども、法律の条文ではこれらの用語にお目にかかることができません。
指針や通知のレベルになるとこれらの表現が普通に使われているので、まさか、とお感じになる方もいるかもしれませんが、これが法令の、そうは問屋が卸さない世界の一端という言うこともでき、例えば、フレックスタイム制についてちょっと条文に戻って確認したいと思って労働基準法の条文を検索して開き、Ctrl+Fで「フレックスタイム」と入力しても何もヒットしない、という事態に立ち尽くすようなこともあるかもしれません。
労働時間等設定改善指針
法改正を受け、法に基づく指針である「労働時間等設定改善指針」も改正されることとなるわけですが、この一部改正告示が平成30(2018)年10月30日付にて告示されました。
・JILPT 労働時間等設定改善指針の一部を改正する件
この指針を見ますと(例によって、ようやく)「勤務間インターバル」という表現に出くわすこととなりますが、その内容を細かく見ていきますと、
「終業から始業までの時間の設定」=「勤務間インターバル」
ではなく、「勤務間インターバル」は「終業から始業までの時間の設定」というカテゴリーのうちの一つの要素に過ぎないことがわかります。
整理するほどでもないですが、整理すると下表のとおりとなります。
「終業及び始業の時刻に関する措置」の内容
ト 終業及び始業の時刻に関する措置
(イ)深夜業の回数の制限 | 深夜業の回数を制限すること |
(ロ)勤務間インターバル | 前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保すること |
(ハ)朝型の働き方 | 一定の時刻以降に働くことを禁止し、やむを得ない場合は始業前の朝の時間帯に業務を処理すること等 |
「深夜業の回数の制限」はわかるけれど「朝型の働き方」は「勤務間インターバル」とは逆ではないの?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、「勤務間インターバル」は夜遅くまで残業したから翌朝遅く来れるということだけでなく、翌朝通常通り来るために遅くならないよう早めに切り上げようという効果も生むことから、
いわゆる朝型の働き方は、勤務間インターバルと同様の効果をもたらすと考えられる
との解説もなされているところです。
「勤務間インターバル」は、結果として長時間労働の削減になることもあるものの、あくまでもその目的は、
労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、労働者の健康の保持や仕事と生活の調和を図るため
とされています。
ではなぜ「勤務間インターバル」だけが?
「勤務間インターバル」という言葉をよく聞くようになっている理由は、厚生労働省が「勤務間インターバル」の導入率を1.4%から2020年までに10%以上に引き上げる目標を掲げているため、周知のための積極的な広報活動が行われており、中小企業のみが対象となりますが導入のための助成金も用意されています。
施行日
平成31(2019)年4月1日から施行です。
【この記事の改正データベース(法改部)はこちら】
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