雇用施策基本方針と監督指導の強化

2018年11月16日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働施策総合推進法.
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働き方改革法の中ではやや地味な印象ですが、雇用対策法が改正されました。
地味とはいえ、法律名が改正となっていますので、大きな改正ともいえます。新名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」というかなり長めのものとなりましたが、略称としては「労働施策総合推進法」が使われているようです。
施行日は、平成30(2018)年7月6日と公布日当日であり、働き方改革法の中でもトップを切ってすでに施行されている法律です。

旧「雇用対策法」と、新「働き方改革推進法」

これまでの雇用対策法は、その名のとおり、労働力の需給調整など労働市場における雇用対策が中心施策でした。これが「労働施策を総合的に推進すること」を主眼とする法律に変わったわけですが、現在検討が進められている、新法に基づく「労働施策基本方針」の内容は、働き方改革の基本的な施策がまとめられるものとなっており、俗に表現すれば「働き方改革推進法」と言ってもよいかもしれません。
とはいえ、今まで同法に基づいて行われてきた施策が削除されたわけではないため、その一部を表現しているにすぎないとも言えるでしょう。

冒頭で「地味」と書きましたが、世間的にはあまりマスコミ等では取り上げられていないという意味であって、むしろ働き方改革を推進する法律という意味では中心に存在する法律であり、その基本方針に定められたことを受け、各法や各施策などにおいて具体的に進められていくという流れになっていくようです。

「労働施策基本方針」の策定の検討

新法の施行を受け、平成30(2018)年9月以降、労働政策審議会労働施策基本方針部会において、労働施策基本方針を策定するための検討が行われてきましたが、平成30(2018)年11月14日に行われた第4回部会では、基本方針案が諮問されました。

労働施策基本方針(案)

長時間労働に対する監督指導

さて前置きがなくなりましたが、長時間労働に対する監督指導が今後徹底されていくという報道がなされていたのは、この労働施策基本方針案にその旨が明記された、という意味です。
指針案の3ページにある該当する部分を引用します。

また、労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する。なお、重ねて改善を促しても是正されないもの、違法な長時間労働により過労死等を生じさせたもの、違法な長時間労働により重大な結果を生じさせたものなど重大・悪質な場合は、書類送検を行うなど厳正に対処する。

これまでも、監督指導が強化されてきたことは事実ですし、新法の施行に際して一層強化されるであろうということは容易に想像がつくのですが、むしろ太字にした箇所が印象的な感じがします。
まずは、主体的な取組を促すことが掲げられ、また、人によって(監督署によって)言うことが違う、といったことがないようにするとの決意も読み取れます。
また、あわせて中小企業に対する配慮についても、4ページに改めて明記がなされています。

長時間労働の是正に向けた取組を行うに当たり、特に、中小企業等においては、大企業に比べて、労務管理の体制が十分でないことに加え、人材の確保や発注者等との取引関係などに困難な課題を抱えている場合が多いことから、時間外労働又は労働時間の短縮に向けて、これらの課題解決に取り組む中小企業等に対して助成金の活用等により丁寧に支援するなど必要な配慮を行う。

これは、働き方改革法の附則第3条に定められた、中小企業に対する経過措置(=配慮)の規定がより具体化されたものと言えるでしょう。


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