統計調査の重要性とコストの削減問題

2018年10月15日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働基準法.
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厚生労働省の毎月勤労統計調査が、その統計手法を変更した平成30(2018)年1月以降、実際の賃金上昇率よりも上振れした調査結果となっていることが指摘されていました。

この件につき、厚生労働省は、平成30年8月分の毎月勤労統計調査の結果速報を公表するにあたり、「平成30年1月調査分以降の賃金データの見方」と題する20ページにもわたる説明資料を合わせて公表することにより、背景や原因、状況についての説明を行うに至ったとの報道がなされていました。

小欄はこの件につき詳細な説明を行う場ではありませんし、この件だけ単独に取り上げるべきではない内容のものですが、「厚生労働省の調査」という観点で、関連しているようで関連していない?または、関連していないようで関連している?ようなことが別に起きているため、前説として取り上げさせていただきました。

調査方法を検討するという趣旨の検討会

厚生労働省では、9月下旬から「裁量労働制実態調査に関する専門家検討会」と題する検討会が行われています。裁量労働制の改正の是非や改正するとしたときの方向性を検討・審議するのではなく、その前段となる実態調査について、どのような調査方法を用いて行えば、裁量労働制の現況を正しく把握できるのかということについて検討するという、やや異例な検討会です。

すっかり忘れてしまっていた、という方々も思い出されたことと思いますが、裁量労働制はその適用拡大が内容に含まれる改正事項が働き方改革法案に盛り込まれていたものの、その調査方法をめぐって国会において議論が紛糾し、裁量労働制に関する改正部分を削除せざるを得ない状況となったわけです。
そして、参議院の働き方改革法案に対する付帯決議には、下記の項目が盛り込まれました。

十八、裁量労働制については、今回発覚した平成二十五年度労働時間等総合実態調査の公的統計としての有意性・信頼性に関わる問題を真摯に反省し、改めて、現行の専門業務型及び企画業務型それぞれの裁量労働制の適用・運用実態を正確に把握し得る調査手法の設計を労使関係者の意見を聴きながら検討し、包括的な再調査を実施すること。その上で、現行の裁量労働制の制度の適正化を図るための制度改革案について検討を実施し、労働政策審議会における議論を行った上で早期に適正化策の実行を図ること。

現段階では、この付帯決議に沿って、ことが進められているというところです。

行政手続コストの削減・電子化という大きな流れの中で

以上のように、たまたま(?)、厚生労働省における二つの調査についての不備が指摘されていますが、一方で、省庁全体としては、各種調査・統計について様々な方策により20%の削減をするという方針が示され、各省庁において取り組みが進められているところです。

・規制改革推進会議行政手続部会 「行政手続コスト削減に向けて(見直し結果と今後の方針)平成 30 年4月 24 日」

上記資料の18ページあたりに「調査・統計に対する協力」という項目があり、省庁ごとの基本計画の策定状況や具体的な削減方策について取りまとめられています。調査・統計の協力依頼に対する対応は、いわゆる「手続」とはちょっと違ったカテゴリーになるような気もしますが、「行政手続コスト」の枠組みの中に入れられ、そのコストの削減が進められているわけです。

以前と比べると、WEB上で入力も可能です、といったふうの調査が増えてきているようですが、記入するのも入力するのも手間としては変わらないような気もします(省庁側の集計は楽になるのかもしれません)。上記資料の19ページには、

給与関係の類似統計について、既に給与情報を入力した人事労務ソフトウェアから調査票をプリントアウト可能とし、調査票作成の手間を省くこととする(2020年調査から実施)。

といった、本当に実現が可能なのか?と思われる記載もありますが、そもそも「類似統計」がそれぞれ本当に必要な統計なのか、という観点でも削減を進めていただきたいものです。


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