電子申請の義務化(大企業等)についてのパブリックコメント

2018年9月3日 | から管理者 | ファイル: 未分類.
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内閣府において規制改革推進会議が平成28(2016)年から断続的に開かれていて、様々な分野の規制改革を実施するための検討が行われています。
その中でも行政手続コストの削減は主要なテーマとなっており、「行政手続部会」という専門部会が設けられ、さらにその下に第1検討チーム、第2検討チームと分かれるなど、詳細な議論が行われているところです。

このような流れの中、今まであった手続そのものをなくしてしまうという画期的な改正が社会保険分野で行わることが決定したことは、小欄下記記事にて言及させていただいたとおりです。

・平成30(2018)年8月27日付 「一括有期事業の手続が簡素化される改正」

行政手続コスト削減の3原則というものが掲げられていて、
①行政手続の電子化の徹底(デジタルファースト)
②同じ情報は一度だけの原則(ワンスオンリー)
③書式・様式の統一
という内容のものですが、本日は①についての動きを取り上げさせていただきます。

電子申請、義務化(大企業等から)

まだ正式に決定したわけではありませんが、大規模法人等について、社会保険の届出の一部を電子申請にて行うことを義務化する内容のパブリックコメントが出ています。

・パブリックコメント 「健康保険法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令案に関する御意見募集について」

まずは、対象となるのが大企業だけではないというところに注意が必要です。

①資本金、出資金の額又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
②保険業法第2条第5項に規定する相互会社
③投資信託及び投資法人に関する法律第2条第 12 項に規定する投資法人
④資産の流動化に関する法律第2条第3項に規定する特定目的会社

①の「資本金が1億円以上の大企業」については、以前からそのような検討がなされていて、平成 30 年4月 24 日に公表された規制改革推進会議行政手続部会の「行政手続コスト削減に向けて(見直し結果と今後の方針)」という資料(11ページ)の中でも触れられていたとおりですが、②~④が唐突に出てきたような感じもし、対象は大企業だけではない、ということがわかります。

税務手続における電子申告義務化に足並みをそろえる

それでは、②~④は一体どこから出てきたのかと申しますと、税務手続においても同様に電子申告の義務化が進められており、その対象となる法人の範囲に合わせたということのようです。

・国税庁「大法人の電子申告の義務化の概要について」

※このページの下の方にある電子申告の義務化の対象法人一覧表」がわかりやすくまとめられています。

なお、税務と社会保険で異なるのは、税務は「内国法人」という限定があるのに対し、社会保険はそのような限定がないというところです。

対象となる届出

対象となる届出については、当初の予定より限定されたものとなったようで、
(1)  報酬月額の届出
(2)  報酬月額変更の届出
(3)  賞与額の届出
算定、月変、賞与といういわゆる給与計算に直接かかわる三つの届出のみが掲げられています。

義務化と言われると何となく嫌な気分になるのが心情というもので、本来でしたら、電子申請にインセンティブを与えれば義務化せずとも自然に普及していくものと思うのですが、なかなかそういった発想にはならないようです。
窓口に行くよりも電子申請の方が処理が遅いという状況が以前よりは徐々に改善されてきたようですが、「デジタルファースト」を謳うのであれば、当然、電子申請の方が処理が速いという状況を作るべきであり、そういった状況が実現すれば、義務化という発想はナンセンスだったよね、と後から振り返ることになるのではないでしょうか。

意見・情報受付締切日

本改正に対する意見・情報の受付締切日は、9月14日までとなっています。

施行日と経過措置

本改正の施行日は、平成32(2020)年4月1日が予定されており、実際の適用は、平成32年4月1日以降に開始する事業年度からの届出が対象となる経過措置が予定されています。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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