厚生年金保険料率が改正されない件

2018年9月5日 | から管理者 | ファイル: 厚生年金保険法.
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毎年9月といえば…

毎年9月といえば、厚生年金保険料率が改正される月(実際の給与計算における変更はその翌月の10月)、と体で覚えている方も多いかと思います。
その認識は昨年までは正しく、今年からその心配は不要となりました。

厚生年金保険料率の引上げが終了することを告げるプレスリリース

実は、昨年の9月の最終改正の段階で、今年が引き上げの最後の年ですよ、ということを伝えるプレスリリースが出ておりました。

・厚生労働省 「厚生年金保険料率の引上げが終了します」

上記資料の3ページの下の表がわかりやすいのですが、平成16年の法律改正により、毎年0.354%ずつ(平成29年は0.118%)引き上げられることが決定されており、13年に及ぶ経過措置が平成29年に終了したということを表しています。
平成16年に決まった当時は、引き上げが終了するのは遠い未来の話のような気がしていましたが、もうこの日が来たのかと感じる方は多いのではないかと思います。

なお「経過措置」と書きましたが、厚生年金保険法の附則ではなく、本則(第81条 保険料)のところに表でストレートに書かれているため、厳密には(法制執務的には)、「経過措置」ではありません。

今後は?

さて、「引き上げは終了」とは言うものの、今後さらなる高齢化が進む中、保険料はどうなっていくのでしょうか。本当にこれ以上引き上げなくて済むと思っている方は多くはないのではないでしょうか。法律を改正さえすれば、保険料は引き上げられるわけです。

現在行われている「社会保障審議会年金部会」における議論を見てみますと、このところ報道されている下記のような事項が検討されていく予定となっているようです。

・平成30(2018)年4月4日 第1回社会保障審議会年金資料「年金部会における当面の議論の進め方」

①マクロ経済スライドのあり方
② 被用者保険の適用拡大
③ 高齢期の就労と年金
④ 高所得者の年金給付と課税

この中で企業実務にかかわってくるのは②と③です。

「被用者保険の適用拡大」については、短時間労働者についてのさらなる適用拡大が検討されています。報道によれば、現在のところ、従業員501人以上という要件を引き下げたり、賃金水準の要件を引き下げるなどの検討が行われる予定のようです。
この件に関しては、平成30 年6 月15日に決定された「骨太の方針」でも言及がなされていて、「勤労者皆保険制度」(「国民皆保険」「国民皆年金」ではなく…)という新たな概念が示されているのが注目です「経済財政運営と改革の基本方針 2018 について」

「高齢期の就労と年金」については、「年金受給開始年齢の柔軟化」や「在職老齢年金制度の見直し」が検討されていくようです。

13年にわたる保険料引き上げが終わったとたんに、さらに保険料を引き上げる検討というのは今のところ行われていないようで、一人当たりの保険料を上げる動きより、保険料を払う人を増やすという方向にシフトしていることがうかがえます。


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