一括有期事業の手続が簡素化される改正

2018年8月27日 | から管理者 | ファイル: 労働保険徴収法.
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この手続は、そもそも必要なのか、と感じる手続がたまにあります。そのようなときに、どうしてこの手続は必要なのですか、と問うと、窓口レベルでは、そう決まっているからとしか言いようがないといったような回答しか得られないのはやむを得ないことと思われます。

制度が始まったときは当然必要だったものの、時代の変遷を経て形骸化するなど、どう考えてもこれって必要ないでしょ、といったようなものでも果たしてそれをなくすといったところまではなかなかいかないというのが世の常、といった諦念も持ち合わせないとやっていけないところもあるものです。

行政手続コスト、20%削減(目標)

ところが、このような状況を打破し、行政手続コストを削減していこうという動きが具体化していて、内閣府の規制改革推進会議において、行政手続コストを20%削減することが目標として掲げられています。これを受けて各省庁ごとに、手続の簡素化や、IT化(オンライン化など)、手続そのものを廃止するなどの具体的な検討が進められているところです。

画期的な改正、平成31(2019)年4月1日施行

そのような大きな流れの中で、この度、画期的ともいえる改正が行われることとなりました。
一括有期事業に関する届出についての二つの改正です。

・厚生労働省 「一括有期事業を行う事業主の事務手続を簡素化します」

一括有期事業とは

建設の事業においては、一つの工事それぞれについて労働保険料の概算、確定申告を行うのが原則ですが、小規模な工事にまでそれを当てはめると申告事務が非常に煩雑となるため、一定の小規模な工事についてはまとめて届け出ることとしてよい、ただし、隣接県や厚生労働大臣が指定した都道府県の区域で行う工事のみ一括することができる、というものです。

改正①「一括有期事業にかかる地域要件の廃止」

例えば、全国展開している企業で全国で工事を行うような場合、地域要件があるため全国を網羅するとなると関東、近畿、四国、九州などの地域ブロックごとに申告納付をしなければならず(企業によっては一括有期事業だけで7枚とか8枚とかになったりします)、本社で申告納付事務を行っているのに、何で分けて申告しなければならないのか、といった疑問が生じていました。

これが今回の改正によって、一括できる小規模な工事のみならば本社1枚の申告納付で済むようになるというわけです。

改正②「一括有期事業開始届の廃止」

一口に「建設の事業」といっても数年にわたる大規模なものから半日程度で終わる修繕工事もあります。半日程度で終わるような修繕工事などを多く行う企業にとっては、1か月に100件やそれを超えるような数の工事が日々行われており、それらの工事を取りまとめて「一括有期事業開始届」を提出するという手間はかなりのものでした(翌月10日までに、地域ごとに振り分けが必要)。

しかも「一括有期事業開始届」の内容は、労働保険料の申告納付を年1回行う際に提出する「一括有期事業報告書」の内容と重複しており、実務担当者としては、ああ、何で同じ内容の届出を二回出さなきゃいけないのだろ、開始届って本当に必要なの、という思いが募っていたのです。

厚生労働省の上記サイトの別添3「省令改正案の概要」の中の

一方、一括有期事業開始届により把握される事項は、他の届出等により確認することも可能である。

という記載は、このことを指しています。

「規制改革ホットライン」、はじまる

建設の事業にかかわりのない業種の方々には関係のない話を長々と触れてきましたが、今回の改正は、冒頭記載したような状況に風穴を開けることになるであろうと感じています。

内閣府は、国民や企業等からの提案を受け付ける「規制改革ホットライン」を設置して、

平成30年9月1日(土)~9月30日(日)の間、集中受付を実施しております。

日常生活や仕事において不便を感じている、あるいは改善を図るべきと考える規制・制度について、見直すべきと考えられるものについて、積極的な御提案を幅広くお寄せ下さい。

と周知を行っています。
まだ8月ですが、すでに受付フォームは稼働しているようにも見えます。数多い意見が動かない山を突き動かすきっかけとなるかもしれません。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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