長時間労働者に対する面接指導の改正に関する経過措置

2018年8月31日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働安全衛生法.
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長時間労働者に対する面接指導に改正が行われることについては、小欄下記記事にて取り上げさせていただきましたが、本日はこの改正に関する経過措置について取り上げさせていただきます。

・平成30(2018)年8月29日付 「働き方改革法のうち改正安衛法関連の省令案が公表されました」

経過措置のあるもの、ないもの

長時間労働者に対する面接指導が三つのカテゴリーに分かれますが、経過措置があるものとないものがあります。

〇平成31年4月1日以降の分類表

時間外・休日労働時間数(1か月あたり) 労働者からの申出要件 経過措置
1 すべての労働者 80時間超 あり なし
2 新商品等の研究開発業務 100時間超 なし あり
3 高プロ適用者 (100時間超)※ (なし)※ なし

※「高プロ」については平成27年「今後の労働時間法制の在り方について(建議)」によるもので、「時間外・休日労働時間」は「健康管理時間」となる。今後の議論により変更となる可能性あり。

以下、各カテゴリーごとの経過措置の有無と具体的内容について見ていきます。

1 すべての労働者

対象者となる時間数に下表のとおり改正が行われる予定ですが、この改正に関する経過措置はありません。

現行 改正後
時間外・休日労働時間数(1か月あたり) 100時間超 80時間超
労働者からの申出要件 あり あり

したがって、平成31年4月1日から80時間超が適用されるということです。
注意が必要なのは、中小企業も含めて適用されるという点です。中小企業は、労基法の改正による時間外労働の上限規制については経過措置により平成32年4月1日以降の適用となりますが、本改正については経過措置がないのです。

2 新技術・商品・サービスの研究開発業務

一方、新商品の研究開発業務については、1の「80時間超で申出要件あり」に加え、100時間超となった労働者はすべて面接指導を行わなわなければならなくなります。すなわち、下表のとおり二段階となります。

現行 改正後
時間外・休日労働時間数(1か月あたり) 100時間超
労働者からの申出要件 なし
時間外・休日労働時間数(1か月あたり) 80時間超 80時間超
100時間以下
労働者からの申出要件 あり あり

この二段階目が加わる改正については、働き方改革法の附則第5条に経過措置が定められています。非常にわかりにくい条文のため引用は避けますが、整理すると下表のとおりとなります。

現行法の適用 改正法の適用
大企業 平成31年3月31日を含む期間を定めている36協定が適用される労働者 平成31年4月1日を含む期間を定めている36協定が適用される労働者
中小企業 平成32年3月31日を含む期間を定めている36協定が適用される労働者 平成32年4月1日を含む期間を定めている36協定が適用される労働者

時間外労働の上限規制の適用に関する経過措置(=36協定に関する経過措置)と連動しているため、ちょっとわかりにくいかもしれません。
まず、36協定が4月起算の企業は深く考える必要はなく、平成31年4月(中小企業は平成32年4月)から適用されます。
一方、例えば36協定が1月起算の企業は、平成32年1月(中小企業は平成33年1月)から、時間外労働の上限規制が適用されるタイミングに合わせて、二段階目の面接指導が加わるということになります。

研究開発業務については、時間外労働の上限規制は適用にならないため若干不思議な感じもしますが、該当するすべての労働者に面接指導をしなければならなくなるという負担に対する配慮があるようです。

※なお「時間外労働の上限規制の適用に関する経過措置(=36協定に関する経過措置)」については、小欄下記記事を合わせてご参照ください。

・平成30年4月16日付 「改正労働基準法の経過措置①」

3 高度プロフェッショナル労働制の適用者

新たにできる制度ですので、経過措置はありません。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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