働き方改革法のうち改正安衛法関連の省令案が公表されました

2018年8月29日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働安全衛生法.
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働き方改革関連法のうち、取り上げられることはあまり多くはないですが、労働安全衛生法の改正についても細かな内容の改正が予定されています。
しかも、労働基準法と同様、詳細は厚生労働省令に委任されている個所も多く、法律の改正内容だけ読んでもおおざっぱ過ぎて結局実務的に何を対応すればよいかわからない、という状況が平成30(2018)年8月末の現在地です。

改正省令の内容案、出る

そのような事態を打開すべく、平成30年8月23日に行われた「第116回労働政策審議会安全衛生分科会」において、労働安全衛生規則等に定める予定の内容(案)が公表されました。

・分科会資料No.1「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴い省令において定める内容(案)について」

安衛法がらみの改正を大きく分けると下記のとおりとなります。

①産業医・産業保健機能の強化
②「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」の新設
③長時間労働者に対する医師による面接指導の強化

このうち①については、細かな改正ですが、内容が多岐にわたるため、追って取り上げさせていただきます。

②については、小欄下記記事にてその検討の状況を記していますので、合わせてご参照ください。

・平成30年8月6日付 「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針案が公表されました」

③に関連して、長時間労働者への面接指導を確実に実施するため、労働時間の把握義務規定が安衛法に新設されることについては、小欄下記記事にて取り上げておりますので合わせてご参照ください。

・平成30年8月8日付 「働き方改革関連法の省令案・指針案等に係るパブリックコメントと労働時間の把握義務」

本日は、③の面接指導そのものに関する改正事項について見ていきます。

「長時間労働者に対する医師による面接指導」も強化されます

長時間労働者に対する面接指導についての改正は、大きく分けて下記の二つです。

①三つのカテゴリーへ分類(二つのカテゴリーが新設)
②対象者となる時間数の改正

これまで長時間労働者への面接指導は特段分類というものはありませんでしたが、3つのカテゴリーになります。

1 すべての労働者(高プロ適用者を除く)に対して適用される面接指導
2 新商品の研究開発業務従事者に対する面接指導
3 高度プロフェッショナル制適用者に対する面接指導

(1) 適用対象となる時間数が100時間超から80時間超に

1は今までもあったわけですが、対象者となる週40時間を超えた時間数に下表のとおり改正が行われます。申出があった労働者に対して行うという要件は変わりありません。

現行 改正後
時間外・休日労働時間数 1か月あたり100時間超 1か月あたり80時間超

ちなみに現行は「1か月あたり80時間超」は努力義務とされています。
なお、この現行の努力義務基準である「80時間超」がどこに書かれているかというと、施行規則ではなく、通達に書かれています。行政によるリーフレットでは、施行規則の第52条の8第2項に書かれているような雰囲気で示されているものあるのですが、実はここには「長時間の労働により…」という漠然とした表現しかなく、通達(平成18年2月24日 基発第0224003号)に、

第2項第1号の「長時間」とは時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えることをいうこと。

という解釈が示されています。

また、この「すべての労働者(高プロ適用者を除く)に対して適用される面接指導」は改正前も後も罰則の適用はありません。

(2) 研究開発業務従事者は、二段階に

新設される2についてですが、「新商品の研究開発業務従事者」で週40時間を超えた時間が「1か月100時間を超えた者」については、申出の要件なく面接指導を行わなければならないこととなりました。したがいまして、「新商品の研究開発業務従事者」は、80時間超~100時間以下の場合は申出要件あり、100時間超で申出要件なしといった具合に、二段階で見ていく必要が出てくるということです。

労基法では時間外労働の上限規制の適用除外となったため、100時間超の場合に申出なしでも面接指導を行い、健康管理を徹底することとなったわけです。この「新商品の研究開発業務従事者に対する面接指導」には罰則の適用があります。

(3) 高プロ適用者は「健康管理時間」を基準に定められる予定

3の高度プロフェッショナル制適用者に対する面接指導は、労基法の労働時間に関する規定が適用除外されることから、新たにできる概念である「健康管理時間」が、週40時間を超えた一定の時間を超える者に対して面接指導を行わなければならないこととなりました。この時間数は施行規則で定められることとなっています。

なお、健康管理時間とは、原則的には「労働者が事業場内にいた時間」と「事業場外において労働した時間」との合計の時間とされています。この「高度プロフェッショナル制適用者に対する面接指導」にも罰則の適用があります。

施行日

ご紹介した省令は、9月中には公布され、安衛法改正法の施行日である平成31年4月1日に合わせて施行される予定です。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら

訂正(平成31(2019)年1月18日)
未確定情報の部分を含め修正を行いました。


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