時間外労働の上限規制と労働基準法第33条

2018年8月24日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働基準法.
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限度時間の原則と例外

働き方改革関連法の中の労働基準法改正において、残業時間の上限が法律に規定されることとなることは周知のとおりですが、細部のルールを定める省令・指針案や新たな36協定の様式案が公開され、9月にも正式に公布が予定されており、平成31(2019)年4月1日の施行(大企業)を前に準備が着々と進んでいます。

残業時間の限度時間は、原則として、月45時間・年360時間以内であることが改めて確認されるとともに、この原則の限度時間を超える場合であっても、月100時間未満(休日労働を含む)・2~6か月の平均80時間以内(休日労働を含む)・年720時間以内という例外の上限を超えることはできないこととされました。

新36協定

原則の限度時間を超える場合は、新たに定められる予定の36協定新様式により、特別条項用の協定届を調製しなければならず、臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合を具体的に記載したり、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康確保措置を事業場ごとに定めて記載しなければならないこととなる予定であることは、小欄下記記事でご紹介させていただいたとおりです。

・平成30年8月20日付 「平成31年4月1日から使用される36協定の様式案が公開されました」

労基法33条とは

業種・業態にもよりますが、企業によっては、かなりハードルが高い事態となるとお感じの方もいらっしゃる中で、本日は、このような思いが多少緩和されるかもしれないもう一つの例外についてご紹介したいと思います。36協定を締結しなくても労働基準監督署の許可(または事後の届出)を受けて時間外をさせることができる場合を規定する労働基準法第33条です。

〇労働基準法
(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
第三十三条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
2 前項ただし書の規定による届出があつた場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。
(第3項 略)

例えば、自然災害による鉄道や電気・ガス・水道の復旧などが典型的に該当するケースで、このようなある程度公的なインフラに携わるような業種でないとなかなか33条の適用にならないのではないかとする向きもあるようですが、案外そうでもなく、適用できる範囲は以外に広いということが示されている資料があります。

働き方改革実行計画にさらりと示されている「災害その他避けることのできない事由」の解釈

平成29年3月28日に決定された「働き方改革実行計画」です。「4.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」の該当部分(14ページ)を以下抜粋します。

(事前に予測できない災害その他事項の取扱)
突発的な事故への対応を含め、事前に予測できない災害その他避けることのできない事由については、労働基準法第 33 条による労働時間の延長の対象となっており、この措置は継続する。措置の内容については、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応や大規模なリコールへの対応なども含まれていることを解釈上、明確化する。

こんなことがあの「働き方改革実行計画」に書かれているのかと意外に思われた方は、リンクから原文をご確認ください。

知っておいて損はない33条の活用局面

文章から読み取れるのは、今般の法改正に伴って解釈を変えるということではなく、今でもそうであるのだけれど知らない人も多いかもしれないので、含まれる事由がけっこうあるということを改めて通達などでお知らせして明確化しますよ、(いざというときは利用してください、)といったようなことかと思います。

例えば月末に上記に書かれているような事態が発生したものの、すでにその月は90時間くらい残業をやっているため、このまま徹夜に近い残業をさせると例外の上限にかかり、罰則の適用になってしまうから、対応をやめて帰らざるを得ないのか、といったことが現場レベルで発生することが想定されますが、そういう場合は33条によることができるということです。

33条に該当するような事由が発生することはあまり望ましいことではないことが多いため、頻繁に起こらない方がいいですし、もちろん恒常的な時間外労働を許すものではないわけですが、行政としても何でもかんでもがんじがらめにしたいということではなく、今ある制度の枠組みの中である程度のバランスを取っていくことを考えているということでしょう。
上記資料はあくまで「計画」であるため、今後施行日に向けて、新たな通達等の発出により、より具体的な解釈が示されるものと思われます。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら

この記事のその後
令和元(2019)年6月7日付で通達が発出されました。小欄下記記事をご参照ください。

・令和元年6月24日 「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働」に関する通達


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