有給休暇の取得義務の特例についての資料が公開されました

2018年8月22日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働基準法.
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平成31(2019)年4月1日から施行される改正労働基準法の改正項目の中で「年次有給休暇の取得義務化」については、どの企業にも関係があり対応しなければならない項目となっています。

有休の付与ルールは、企業独自に、付与日数を多くしたり、前倒しで付与したりするなど法を上回って付与しているケースも多く、改正法のルールを企業ごとの運用に当てはめたときに細かな運用がどうなるかよくわからないところがありましたが、平成30(2018)年8月9日に行われた第145回労働政策審議会労働条件分科会において、その悩みを解消する資料が公開されました。

資料No.3 年休を前倒しで付与した場合の年休時季指定義務の特例について(案)

表題にありますとおり、この資料は、有給休暇を前倒しで付与する場合についての省令の条文案を掲げ、その解説をしています。

「年次有給休暇の取得義務」について定めた労働基準法の新第39条第7項は、その「ただし書」にて、有給休暇を前倒しで付与する場合の細かなルールについては厚生労働省令で定めます、と省令に委任していますが、上記資料によってその内容が明らかになってきたというわけです。

その内容は、改めて文章で説明するというよりは、資料をご覧いただいた方がすぐわかるのですが、資料の読み方としては下記のとおりとされた方がよりわかりやすいでしょう。

※4ページある各ページごとの読み方
① まず下にある図を眺める(これだけでもイメージはつかめます)
② 中ほどにある「第○項の内容」という解説を読む(これでほぼ理解できるでしょう)
③ 一番上にある「条文案」は、余裕のある方や研究熱心な方ならば読む(読むとかえって何を言っているのかわからなくなるおそれもありますので注意が必要です)

そして、各ページの概要は下記のとおりです。

①1ページ目
例えば「入社時に一律10日付与する」というケースです。このケースはシンプルです。ただし「通常の前倒し」という表現を使っていますが、これが前倒しの中の「通常」なのかはよくわかりません。

②2ページ目
例えば「入社時の翌年度4月から一斉付与するが、それまでは入社月に応じて比例付与する」というケースです。このパターンを一言で表現する言葉が見当たりませんが、資料では「ダブルトラック発生時」という苦肉の表現を用いています。この表現が浸透していくのでしょうか。
内容は、例えば、10月1日入社の方は翌々年の3月31日までの1年6か月の期間内に比例計算した日数を取得させるということでもよい、ということですね。18ヶ月÷12×5(この式は条文案より)で、このケースは7.5日となるわけです。なお、端数処理は現時点で明らかにされていません。

③3ページ目
1ページ目と2ページ目の特例が終わった後のことについての説明です。特例が終わった後は、39条7項本文の原則に戻りますよ、ということがていねいに解説されています。

④4ページ目
さらにちょっと複雑なケースです。例えば、原則の付与日は法定の入社6か月後だが、6か月間有休が1日もないと不都合があるため、そのうちの何日かを前倒しで取得することが可能、としているようなケースを指しているものと思われます。

なお、「年次有給休暇の取得義務化」については、平成31年4月1日の施行日前後の取扱いがどうなるかについても疑義が生じているところです。この件については、平成30年4月23日付小欄下記記事をご参照ください。

・平成30年4月23日付 改正労働基準法の経過措置②


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