複数就業者への労災保険給付の在り方についての検討

2018年6月12日 | から管理者 | ファイル: 副業・兼業, 労災保険法.
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副業・兼業に関わる制度的課題についての検討が順次進められていることは小欄でも随時取り上げさせていただいているところですが、この度、労災保険の給付にまつわる検討が開始されることが公表されました。

労災保険の給付は、治療費と休業補償とに大きく分かれます。
治療費については複数就業者であっても特に問題は生じ得ませんが、休業補償については、事故が発生した就業先での賃金をベースに算定されるのであって、複数就業先の賃金が合算されて算定されるわけではないという課題があります。

本業がフルタイムで、副業がパートタイムで両方とも雇用者という場合を想定してみましょう。
本業での労災事故ならまだ大きな影響はないのですが、副業先で労災事故に遭い、休業するに至るようなケースは、副業先の低い賃金をベースに算定した給付金額しか受けられないというのが現行制度です。

労災保険部会が平成30(2018)年6月22日に開催されることが公表されましたが、

・厚生労働省 第70回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会開催案内

その中の議題として「複数就業者への労災保険給付の在り方について」が掲げられていますので、上記のような制度的課題についての検討が始まるものと思われます。

労災事故は、複数就業者にとって、会社の許可を得ず、または届出を行わずに行っているような場合、そのことが発覚する発端となるという切実な問題に直面しがちです。
技術的な課題はあるにせよ複数就業先の賃金が合算されるような方向性そのものは否定されないでしょうが、労使ともに、複数就業の問題から目を背けることができなくなることを覚悟しなければならない契機となるのかもしれません。

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