高度プロフェッショナル制度に関するいくつかの誤解と理解不足

2018年6月8日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法.
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参議院で働き方改革関連法案の審議が始まっています。
その中で特に注目されているのは「高度プロフェッショナル制度」ですが、いろいろと誤解などがあるようですので、事実関係を整理します。まずはその名称からです。

「名称」について

資料ごとに使用されている名称を整理すると、下表のとおりとなります。

資料名 制度名
概要 高度プロフェッショナル制度
法律案要綱 特定高度専門業務・成果型労働制
法律案案文 (特になし)

それぞれの実際の内容は下記資料でご確認ください(一番下の方)。

・厚生労働省 第196回国会(平成30年常会)提出法律案

実際の条文(=法律案案文)には、これといった制度名は見当たらないのですが、これは特段意図が含まれているわけではなく、他のすでに浸透している「フレックスタイム制」や「企画業務型裁量労働制」なども同様で、意外かもしれませんが法律の条文にはこれらの名称は出てきません。
その一方で、法律案要綱ではこれらの名称が使われます。今回、これらの制度にも改正が入っている関係で、実際に法律案要綱には使用されていますので、ご興味のある方は検索をかけて確かめてみてください。

「成果」という言葉

「時間ではなく成果、などとはどこにも書かれていない」という論調が一部見受けられるようですが、実は書いてあります。新設される第41条の2の中の対象業務を説明する第1号です。

〇労働基準法
第41条の2 (略)
一 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務 (以下この項において「対象業務」という。)
(以下略)

もちろん、直接的に「成果で評価せよ」という規制ではありませんが、成果という言葉は出てこないというのは誤解であって、対象業務は時間と成果の関連性が低い業務が定められるという意味で使用されていますので、留意が必要なところです。

「健康管理時間」という概念

労働基準法の労働時間に関する規定が適用除外されるということは間違いないのですが、その代わりに「健康管理時間」という概念が導入されます。

〇労働基準法
第41条の2 (略)
三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(第五号ロ及びニ並びに第六号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
(以下略)

この「健康管理時間」を把握する措置を講じないと、実質的には高度プロフェッショナル制度を導入できないということです。
かなり重要な概念だと思いますが、報道などの高度プロフェッショナル制度の解説の中には、この点に関する説明が欠落しているものが少なくなく、制度の正しい理解につながっていないのではないかという懸念を抱かざるを得ません。

「健康管理時間」は「労働時間」と実質的にほぼ同じ(労働時間以外の時間を除かない方が管理は楽だが、除かないと健康管理時間が長くなり医師による長時間労働面接指導対象者が増えるため)ものですが、目的が異なっていて、割増賃金の支払いのためではなく、健康管理のために把握すべきものという位置づけです。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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