副業推進と働き方改革法案

2018年6月4日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 副業・兼業.
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「働き方改革関連法案の中に、昨今の副業推進にまつわる内容は含まれていないのですね…。」というご指摘を受けました。

このたび副業が「解禁」されたわけではない

はい、実はそのとおりです。今年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が公表され、同時に「モデル就業規則」が改正されて、国として副業・兼業を促進していくことが明確になりました。

・厚生労働省 「副業・兼業」

その後、報道などでは「副業解禁」などの見出しがつけられ取り上げられたため、法律による規制が緩和されたのかと誤解される向きもあったようです。
しかし、小欄でも何度か取り上げさせていただいているとおり、ガイドラインもモデル就業規則も特段法的な拘束力を持っているわけではありません。

この点については、ガイドラインにおいても、

副業・兼業自体への法的な規制はない

とした上で、過去の裁判例においても、

労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり…

とされ、 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」パンフレットにおいても、モデル就業規則に新設された条文について、

あくまでも副業・兼業に関する規定の一例であり、各企業において必ずこの規定例どおりの規定にしなければならないという性質のものではありません

との言及があるとおりです。

副業解禁への期待感

とはいえ、個別企業において副業を推進する動きが次々に報道される中、自分が勤めている会社が副業を禁止しており、認める方向での検討がなされそうもない状況にあっては、いよいよ働き方改革関連法案において、例えば「副業を禁止してはならない」といった文字通り「副業解禁」を謳った条文が追加されるなどの改正がなされるのではないかという期待があったようです。

許可制→届出制(モデル就業規則の話)

しかし、法案の概要や条文をつぶさに読んでも、副業に関する内容については見当たりません。
これはやはり、副業はあくまでも基本的には「自由」であることに変わりはなく、モデル就業規則を「許可制」から「届出制」に変更することによって、副業を推進していくということであって、法的に規制を外すなどの観点には立っていないと考えられます。

大きな枠組みは以上のとおりですが、一方で、労働時間の通算や社会保険の取扱いといった各個別の課題については、パンフレットの1ページに、

各制度的課題の検討については、今後行われることになります

との指摘があるとおりです。

実行計画と法案の整理はまた追って

以上のような誤解や期待の背景には、平成29(2017)年3月28日に決定された働き方改革実行計画に定められた内容と、今般の働き方改革関連法案の内容との関連性がおおよそ1年の歳月を経て、よくわからなくなってきているという側面があるのではないかと思います。
もちろん、実行計画はあくまでも「計画」であり、また個別の項目は、法改正が必要なものとそうでないものが含まれているのですが、小欄では、このあたりの整理をして、追って取り上げさせていただく予定です。


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