ハローワークや職業紹介事業者等における求人について、一定の労働関係法令違反のある求人者からの求人の申込みを受理しないことが可能となっています。
「求人不受理」制度とは
どのような場合に求人不受理の対象となるのかについては、労働基準法違反により是正指導を受けた場合や送検され、公表された場合がわかりやすいのですが、これ以外にも広範囲に対象が定められており、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に定められた各種義務や不利益取扱いの禁止などの規定に違反し、法違反の是正を求める勧告に従わず公表されたような場合も対象となっています。
平成28(2016)年3月1日に施行された時点では、ハローワークにおける新卒の求人が対象となっていましたが、令和2(2020)年3月30日の改正により、すべての求人が対象となり、職業紹介事業者においても受理しないことが可能となりました。改正の経緯について詳しく知りたい方は、下記をご参照ください。
・厚生労働省 職業紹介における求人の不受理
対象となる条項や具体的な不受理期間については、下記資料にわかりやすくまとめられています。
・厚生労働省 改正職業安定法(求⼈不受理)について
規制が増えると不受理の対象となる条項も増える
この「対象となる条項」は、関連する労働関係法令に新たな規制が追加されると、それらに対応して増えていくこととなります。
例えば、パワハラ防止措置の義務化およびパワハラについての相談を行ったことを理由とする不利益取扱いの禁止が法制化された際には、同時に、厚生労働大臣はこれらの規定に違反している事業主に対し、勧告をし、勧告に従わなかったときはその旨を公表することができるという規定も設けられました。これに対応して、この規定も求人不受理の対象条項に加えられたというわけです。
関係性をたどって整理する下表のようになります。
措置義務や不利益取扱いの禁止など |
↓ 違反すると |
都道府県労働局による助言・指導・勧告 |
↓ 勧告に従わなかったとき |
都道府県労働局による公表 |
↓ 公表された場合 |
ハローワーク・職業紹介事業者は、その企業の求人を不受理とすることができる |
育児・介護休業法の改正に伴い
今般の育児・介護休業法の改正により、男性の育休取得促進のための改正が行われましたが、その中でいくつかの義務や不利益取扱いの禁止条項が加えられました。これらの規定に対応して、求人不受理の対象条項を加える改正も行われています。
育児・介護休業法の改正は大きくわけると下表のとおり2段階にわかれるため、求人不受理の対象となる条項もそれぞれの段階に分けて施行されることとなります。
令和4年4月1日施行 | 取得促進に向けた職場環境の整備 |
令和4年10月1日施行 | 男性の取得率向上を中心とした制度の拡充 |
令和4年4月1日施行分
本人または配偶者が妊娠・出産したことを申し出た際に、個別の周知や意向確認を行う措置が義務化されます。この改正そのものの内容はまた追って取り上げる機会があると思いますが、この規定に関連して「本人または配偶者が妊娠・出産したことを申し出たこと」を理由とした解雇その他の不利益取扱いの禁止という条項が加えらえます。
これに対応して、この規定に違反し是正を求める勧告に従わずに公表された場合についても求人不受理とすることができる対象となります。
令和4年10月1日施行分
10月には出生時育児休業(産後パパ育休)が新設されることに伴い、下表のような義務や不利益取扱いの禁止についての条項が加えられます。
産後パパ育休の申出についての義務(申出があったときは原則として拒むことができない) | |
産後パパ育休の申出・取得 | を理由とする不利益取扱い |
産後パパ育休中の就業可能日等を申出・同意しなかった等 |
これに対応して、これらの規定に違反し是正を求める勧告に従わずに公表された場合についても求人不受理とすることができる対象となります。
職業安定法施行令の改正
求人不受理の対象となる条項は、職業安定法施行令第1条第6号に掲げられていて、職業安定法施行令が改正されることにより行われますが、今回の改正の概要は今のところ下記資料が詳しいようです。
・厚生労働省 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案等の概要
4月1日施行分についての改正は、すでに改正政令が公布されています。
・令和3(2021)年9月27日付官報 職業安定法施行令及び行政手続法施行令の一部を改正する政令
この改正のアーカイブはこちら。
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