雇用調整助成金の延長などについては、令和3(2021)年1月23日付の小欄下記記事にて取り上げたとおりですが、
その後の情勢がさらに複雑化してきています。
と言いますのも、
① メディアによる当局のリリース前の記事
② 当局による前広な、確定はしていない情報のリリース
③ 正式な改正法令等の公布
④ 実際の運用の開始
短期間にそれぞれの段階の情報が混在して、今どのステイタスなのかよくわからないといった状況に陥っているためです。
1 雇用調整助成金の特例措置の延長
この件についてははっきりしていて、④のステイタスまで到達しています。
改正省令が公布され、
・令和3年2月8日付官報 「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令」
同日付けで公表されたリーフレットにも、その内容が上段部分に明記されています。
・厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置を延長します」
表にするほどのこともないですが、整理するとこのようになります。
改正前 | 改正後 | |
特例措置の延長期限 | 令和3年2月28日まで | 緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末まで |
なお、「全国で解除された月」とは、今のところの予定の3月7日を指すのではなく、実際に緊急事態解除宣言が出された月を指しますので、もし前倒しで2月末に解除されることとなりますと3月末までということになります。
2 大企業の助成率の引上げ
以上は比較的わかりやすいのですが、ちょっとわかりにくいのが大企業の助成率の引上げです。こちらについては、③まで進んだけれど④はまだこれからという段階です。
③ | ④ | |
A 営業時間の短縮等に協力する事業主 | 令和3年1月21日付官報 雇用保険法施行規則の一部を改正する省令 |
本特例にかかる申請はまだ行うことができない。 |
B 特に業況が悪い事業主 | 令和3年2月8日付官報 雇用保険法施行規則の一部を改正する省令 |
〃 |
まず、③についてですが、Aはすでに1月に公布されており、Bは2月に入ってからという時間差があります。
このため、Aについてのみ記載がされたリーフレットもありますので、注意が必要です(厚生労働省のWebサイトからは削除されているようです)。
AとB両方が記載された最新のリーフレットは下記になります。
・厚生労働省 「雇用調整助成金の特例措置に係る大企業の助成率の引き上げのお知らせ」
こちらの裏面(2ページ目)のQ2に記載がありますとおり、まだこれらの特例用の様式が公開されておらず、2月下旬まで待たなければならないということです。
なお、2月8日付で改訂された「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)」にはA・Bについての記載は一切見受けられないなどの混乱も見受けられます。この点については、様式の公開に合わせてガイドブックも更新する予定なのであろうと推測できます。
助成率の引き上げの内容は下表のとおりです。
○解雇がない場合
改正前 | 改正後 | |
大企業 | 3/4 | 10/10 |
中小企業 | 10/10 |
○解雇がある場合
改正前 | 改正後 | |
大企業 | 2/3 | 4/5 |
中小企業 | 4/5 |
雇用維持要件の緩和
解雇をしているか否かによって上表のとおり、助成率が変わってきますので「雇用維持要件」に該当しているのかどうかは大きな問題です。この点に関して、厚生労働省は下記プレスリリースにて、
・厚生労働省 「休業支援金・給付金の大企業の非正規雇用労働者の取扱い及び雇用調整助成金の雇用維持要件の緩和等について」
今般、上記に該当する大企業に加え、中小企業の全ての事業所を対象として、令和3年1月8日以降、緊急事態宣言解除月の翌月末までの休業等については、雇用維持要件を緩和し、令和3年1月8日以降の解雇等の有無により、適用する助成率を判断することとする予定です。
※ 現行の特例措置では、令和2年1月24日以降の解雇等の有無により確認しています。
と言及しています。
期間を1年遡って見るか否かは大きな違いですが、この点については②の前広情報の段階であり、紹介したリーフレット等には一切具体的な言及はありません。今後の正式な情報公開を待つしかなさそうです。
コメントは締め切りました。