全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案

2021年2月9日 | から管理者 | ファイル: 健康保険法, 厚生年金保険法, 国民健康保険法, 高齢者医療確保法.
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全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案が令和3(2021)年2月5日に国会に提出されました。

・厚生労働省 「第204回国会(令和3年常会)提出法律案」(上から3つめ)

最近の傾向

健康保険法をはじめとした関連法を一括して改正する改正法が数年おきに提出されるのがこのところの恒例となってきました。

・平成27(2015)年 持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律

・令和元(2019)年 医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律

これらの他に年金制度についての一括改正法も数年おきに行われ、また施行日も多岐にわたってすべての施行を迎えないまま次の一括改正法が出てくるという事態もあり、特に年金に関しては複雑な入れ子構造になっていたりします。
健保は年金ほど複雑ではないですが、4年に1度と決まっているわけではないものの、夏季と冬季が交互に訪れるさながらオリンピックのようです。

全世代型社会保障

さて今回の一括改正法案は「全世代対応型の社会保障制度を構築するため」という大義名分を冠していて、その名前からは相当な大改革が行われるような雰囲気も漂っていますが、さほど大きな改正内容はなく全体的に小粒な改正となったようです。

今後もどちらかというと、一気に大改革をするという感じではなく、マイナーチェンジが多岐の項目にわたって行われるということが多くなるのではないでしょうか。今回も大きな見た目が変わるというよりは、部品の交換を行っているという印象が強く、一方で項目は多岐にわたるため、施行日は7に分かれるという法案としては複雑なものになっています。

改正の内容

前置きが長くなりましたが、75歳以上の医療費負担が一部2割になるというのがメインのトピックスということになるほか、企業実務に直接関係のある改正内容としては、次のようなものです。

①育児休業中の社会保険料免除

とくに男性が取得する場合の短期の育児休業について、月末時点で取得している場合には保険料が免除される一方で、月の途中に短期間の取得をした場合は免除されないという不公平が生じていました。

これを解消するため、毎月の給与から控除される保険料については、同一月内であっても14日以上の休業の場合は免除の対象となります。
一方、賞与については、賞与保険料の免除を目的として育休取得月を選択する傾向が統計からも把握されており、1ヶ月超の取得の場合に免除の対象になるように整理されます。

②傷病手当金

現在の支給期間のルールは、支給開始日から起算して1年を6か月を超えない期間とされ、その間一時的に就労した場合であってもその就労した期間が1年6ヶ月の計算に含まれます。

がん治療のために入退院を繰り返すなどのケースが見られ、治療と仕事の両立の観点から、支給期間を通算して(=一時的に就労する期間は除いて)1年6ヶ月にすることと改められます。

③任意継続被保険者

これまで被保険者が希望して資格を喪失することができませんでしたが、任意脱退ができるようになります。

また、健康保険組合の場合に、標準報酬月額の決定方法を「退職者の従前の標準報酬月額又は全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額」から「健保組合の規約により、従前の標準報酬月額」とすることができるようになります。

施行予定日

まだ決定されたわけではないですが、法案に書かれている施行日を紹介しておきますと、
①は令和4(2022)年10月1日、
②と③は令和4年1月1日付の施行が予定されています。

 


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