中途採用に関する情報公表義務の内容

2021年1月12日 | から管理者 | ファイル: 労働施策総合推進法.
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それではこの法改正の内容を具体的にみていきましょう。

法第27条の2第1項の内容

令和2(2020)年3月31日付で公布された「雇用保険法等の一部を改正する法律」の中に含まれる「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実に関する法律」の改正内容(24ページ)は、新たに第27条の2という1条が追加されるだけの比較的シンプルなものです。
しかしその中身は、「厚生労働省令で定める」と施行規則にその内容を委任する箇所が4か所、かっこ書きが入れ子になりながら4か所と非常に読みづらいものとなっています。

中途採用比率の公表義務について書かれている第1項のポイントを端的に整理すると、

①常時雇用する労働者数が300人を超える事業主は
②労働者の職業選択に資するよう
③通常の労働者等の数に占める中途採用者の数の割合を
④定期的に公表しなければならない

という内容です。

省令の内容

令和2年12月28日付で公布された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」において、委任された4か所の内容が明らかになりました。

その中で、ポイントとなる第1項には、公表の具体的方法が書かれています。

①おおむね1年に1回以上
②直近の3事業年度について
③インターネットの利用その他の方法により
④求職者等が容易に閲覧できるように

公表しなければならない、とされました。

具体例

次のような企業があったとしましょう。

A社 新卒 中途 割合
3事業年度前 100 10 110 9.09%
2事業年度前 110 15 125 12%
1事業年度前 60 20 80 25%

 

B社 新卒 中途 割合
3事業年度前 100 10 110 9.09%
2事業年度前 120 15 135 11.11%
1事業年度前 140 12 152 7.89%

適当に数字を設定してみましたが、このうち公表しなければならないのは「割合」だけなので、採用数を公表する必要はありません。

A社 割合
3事業年度前 9.09%
2事業年度前 12%
1事業年度前 25%

 

B社 割合
3事業年度前 9.09%
2事業年度前 11.11%
1事業年度前 7.89%

これは果たして「労働者の職業選択に資する」情報なのだろうか?と誰もが思うのではないでしょうか。

法第27条の2第2項の内容

もちろん国もそこに目を背けているわけではなく、新設される第27条の2第2項に、次のような規定を置いています。

国は、事業主による前項に規定する割合その他の中途採用に関する情報の自主的な公表が促進されるよう、必要な支援を行うものとする。

具体的に何を支援しようとしているのでしょうか。下記資料に記載があります。

・令和元(2019)年12月25日 労働政策審議会職業安定分科会「高齢者の雇用・職業機会の確保及び中途採用に関する情報公表について」

6ページから中途採用に関する情報公表についての記載がありますが、7ページの4(1)に、

中途採用実績の多寡のみをもって職場に対する評価がなされるべきものではなく、

とあるように、このことは織り込みずみで、

大企業については、法的義務を求める項目以外にも自主的な公表が進むよう、中高年齢者、就職氷河期世代の中途採用比率といった定量的な情報、中途採用に関する企業の考え方、中途採用後のキャリアパス・人材育成・処遇等とった定性的な情報の公表を支援することが適当である。

といったややハードルが高そうなことも書かれています。

執筆時点で厚生労働省からは確定情報の広報がなされていないようですが、施行日に向けて、法的義務のさらなる具体的内容や法を上回る措置の内容が出てくることを待つしかなさそうです。

情報の公表といえば、女性活躍推進法に基づく情報公表が平成28(2016)年4月から労働者301人以上(労働者101人以上の企業への対象拡大については「女性活躍推進行動計画の策定義務等の対象拡大」)の企業について義務化されていますが、このような他の情報公表と別々に対応するのではなく、一括で対処できないかという思いも湧き上がってきますが、この点については、7ページの4(4)に、

…職業情報提供サイト(日本版O-NET)(仮称)の構築などを進めているところであり、…

という記載も見られます。

施行日

施行日は、令和3(2021)年4月1日です。


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