令和2年度雇用保険料率と育児休業給付

2019年12月16日 | から管理者 | ファイル: 労働保険徴収法, 雇用保険法.
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令和元(2019)年12月13日に行われた「第136回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」では、下記報告が示されました。

・厚生労働省 第136回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会資料 雇用保険部会報告(素案)」

いくつかの細かな改正の方向性が示されていますが、これらは稿を改めるとして、今回は雇用保険の財政運営から雇用保険料率の改正の方向性について取り上げたいと思います。

失業率が低ければ雇用保険料率は低くなる、という常識が崩壊

令和元年11月29日に行われた第135回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会にて示された下記資料(5ページ)に「給付の種類ごとにみた給付額の推移」というデータがあります。

・厚生労働省 第135回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 資料2  財政運営部会資料」

こちらを見ると、失業給付(求職者給付等)が失業率の低下に伴い減少する一方で、育児休業給付が増加していることがはっきりと認識でき、これが平成20年代のトレンドだったということがわかります。
景気の変動に伴って決まる雇用保険料率の決定の要素の中に、景気変動に伴わない給付の占める割合が高くなっているという事態が起こっているため、失業率が低いのだから雇用保険料率を下げられるでしょ、という単純な話にはならなくなってきているということです。

育児休業給付を分離

これらの事態に対処すべく「雇用保険部会報告(素案)」に示された方向性は、下記のようなものです。

このため、育児休業給付については、新たに「子を養育するために休業した労働者の雇用と生活の安定を図る」給付として、失業等給付とは異なる給付体系に明確に位置づけるべきである。

そしてその財政運営については、保険料率を区分するという方向性も示されました。

併せて、その収支についても失業等給付とは区分し、失業等給付全体として設定されている雇用保険料率の中に、育児休業給付に充てるべき独自の保険料率を設けて、財政運営を行うべきである。

そしてその具体的な保険料率の見通しも示されています。

育児休業給付に充てる保険料率の水準は、現在の同給付の支出状況及び今後の見通しを踏まえ、当面、現行の雇用保険料のうち4/1,000 相当とすべきである。

その他、下記文言も見受けられます。

一方で、育児休業給付の在り方について、中長期的な観点で議論していくべきである。

そもそも育児休業給付は、雇用保険制度の枠組みの中の制度でよいのかという議論が制度設立当初からありました。
雇用保険に入れない自営業者等に同等の制度がないなど様々な問題点が存在することから、将来的には雇用保険制度から切り離され、例えば(私見ですが)、子ども・子育て拠出金の方で、総合的な少子化対策の中の一環として位置づけられるなどの検討が行われていくものと思われます。

令和2年度雇用保険料率

失業等給付にかかる雇用保険料率は、平成29年度から令和元年度の3年間の時限措置として、6/1000とされていました。

厚生労働省としては、令和2年度以降は現行法による暫定措置が終了するものとして雇用保険料率を8/1000とする前提で、令和2年度の雇用保険料率の議論を開始しましたが、結論としては、下記のとおり、暫定措置を継続する方向性が示されました。

そのため、本来、本部会としては、国庫負担とともに、暫定的な引下げ措置は3年間に限るものと考えていたものであるが、経済財政運営と改革の基本方針 2019 を踏まえ、引き続き雇用保険財政の安定的な運営が維持されると見込まれる2年間に限り、当該暫定措置を継続することもやむを得ない。

このように結論としては、雇用保険料率は改正なしということのようなのですが、その背景には様々な検討が行われています。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら

 

追伸 確定情報ではありませんが、続報を書きました。

・令和2年3月16日付 「令和2(2020)年度雇用保険料率について」


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