令和2(2020)年度の雇用保険料率については、3月13日現在、公式な情報は公表されていないところです。
平成31(2019)年度の料率から変更がない見込みですが、その内訳が変更となる見込みです。
内訳が変更となるのは、育児休業給付が失業等給付のカテゴリーの中から独立するという一大事があるためです。
令和2(2020)年度の雇用保険料率(予想)
雇用保険料率を取りまとめた表がどうなるかというと、下表のようなかたちで表現されることが予想されます。
あくまでも予想のため「一般の事業」のみに絞って試作してみます。
①労働者負担 | ②事業主負担 | ①+② 雇用保険料率 |
||||||
一般の事業 | 計 | (内訳) | 計 | (内訳) | ||||
失業等給付の保険料率 | 育児休業給付の保険料率 | 失業等給付の保険料率 | 育児休業給付の保険料率 | 雇用保険二事業の保険料率 | ||||
3/1000 | 1/1000 | 2/1000 | 6/1000 | 1/1000 | 2/1000 | 3/1000 | 9/1000 |
育児休業給付を独立させるという大改革があるため
育児休業給付について、失業等給付の雇用継続給付から削除するとともに、失業等給付とは別の章として独立した育児休業給付の章を新設するという改革が行われます。章立ての樹系図は下図をご参照ください。
どちらかというと内部的な財政面の話のため、本人・事業主負担のそれぞれの料率も変わらないですし、全体の料率も変更がない予定ですので、特段今までの表現のままでもかまわないのではないかと思う向きもあるかもしれませんが、法律的には大きな改正が行われることから、上表のような表現に変更する方向なのではないかと推測します。
育児休業給付が失業等給付のカテゴリーの中から独立する件の詳細についてお知りになりたい方は、小欄下記記事をご参照ください。
・令和元(2019)年12月16日付 「令和2年度雇用保険料率と育児休業給付」
なお、あくまでも予想ですので実際の表現は異なるものになる可能性があることをご了承ください。
経緯とその根拠
こちらも一般の事業のみとなりますが、経緯を整理すると下表のとおりとなります。
A 二事業の料率が3.5/1000のとき
徴収法 | 基準となる料率 | 弾力条項 |
本則 | 15.5/1000 | 11.5/1000~19.5/1000 |
附則(暫定措置) | 13.5/1000 | 9.5/1000~17.5/1000 |
B 二事業の料率が3/1000引き下げられるとき
徴収法 | 基準となる料率 | 弾力条項 |
本則 | 15/1000 | 11/1000~19/1000 |
附則(暫定措置) | 13/1000 | 9/1000~17/1000 |
附則に定められた暫定措置が平成31年度までとされていたため、これを令和3(2021) 年度まで延長するという法改正が行われた後、弾力条項による最下限である9/1000と定める告示が出るという流れになるでしょう。
根拠を確認されたい方は、下記サイトにあります「雇用保険法等の一部を改正する法律案」の中から、
・厚生労働省 「第201回国会(令和2年常会)提出法律案」
法改正の概要については下記資料を
該当条文については下記資料を
・「雇用保険法等の一部を改正する法律案 新旧対照条文」 (P70~73のあたり)
ご参照ください。
なお、二事業の保険料率について、さらに0.5/1000の引き下げを可能とする改正が上記改正法案に含まれていますが、この改正の施行日は令和3年4月1日が予定されているため、令和2年度の雇用保険料率には直接関係がありません。
その後の展開
2月には、育児休業給付の給付率を現行の67%から80%とする案があるらしいことも報道されていましたが、本当にその方向性であるならば、そのタイミングで育児休業給付を雇用保険制度から切り離すという可能性も考えられ、今回の改正はその布石と見ることもできるでしょう。
上記附則の改正と、育児休業給付の章を新設するという内容が含まれる法律改正を経て、具体的な料率を定める告示が出る流れとなりますが、いわゆる日切れ法案となるため、年度末の3月31日にならないと最終的な確定情報が公表できないという展開になることが予想されます。
施行日
令和2年4月1日です。
追伸(令和2年4月1日)
令和2年4月1日付で厚生労働省から令和2年度の雇用保険料率が公表されました。
・厚生労働省 「令和2年度の雇用保険料率について」
失業等給付と育児休業給付の合計の料率のみが示され、失業等給付と育児休業給付のそれぞれの料率の内訳までは示されない形となったようです。
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