育児・介護休業法上の要介護状態とは何か②

2019年8月29日 | から管理者 | ファイル: 育児介護休業法.
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要介護状態に関する判断基準

「要介護状態」すなわち法第2条第3号でいうところの「常時介護を必要とする状態」とは、通達「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について」(平成28年8月2日 職発 0802第1号雇児発0802第3号)の「第1 総則」-「2 定義」にて、次のように書かれています(4ページ)。

(3) 要介護状態(法第2条第3号) 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める期間にわたり常時介護を必要とする状態をいうものとすること。なお、これは介護保険制度における「要介護状態」と必ずしも一致するものではないこと。
(略)
ハ 「常時介護を必要とする状態」とは、常態的に介護を必要とする状態をいい、 この状態に関する判断については、別添1の判断基準によるものとすること。

すなわち、要件が定義されているというよりは、判断するための基準が示されているということですね。

「別添1の判断基準」の改正

さて、判断基準の内容に入る前に、この判断基準が改正されたことについて、まずは述べなければなりません。平成29(2017)年1月のことでした。

平成29年1月1日施行の育児・介護休業法の改正

このときの介護分野に関する主な改正内容は次のようなものでした。

・介護休業については、対象家族1人につき、3回を上限として、通算93日まで分割取得可能に
・介護休暇の半日単位の取得を可能に
・介護のための所定労働時間の短縮措置等を介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用を可能に
・介護のための所定外労働の免除制度を新設 など

この中でもインパクトがあったのが介護休業の改正でした。それまで、対象家族一人につき、1回しか取得できなかったところ、3回に分けて取得できることとなったのです。
このことにより、介護休業は、従業員が家族の介護そのものをするためだけのものではなく、家族が要介護状態になった初期の段階で、例えば、要介護認定を受けるための諸々の準備が必要といったケースにも活用できることが改めて認識されることとなりました。

もちろん改正前でも、このような利用の仕方が排除されていたわけではなかったのですが、対象家族一人につき1回しか取得できないという状況下では、初期の段階で1枚だけのカードを切るという選択がされることはほとんどありませんでした。

改正前の「別添1の判断基準」

さて一方で、改正される前の「別添1の判断基準」はどうなっていたのでしょうか。その内容は、下記旧通達で確認することができます(136ページの次)。

通達(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について)(平成21年12月28日 職発第1228第4号雇児発第1228第2号)

まず注目は、

「常時介護を必要とする状態」とは、次のいずれかに該当するものとする。

とあるように、以降に掲げる基準に該当する場合、と言い切っていることです(改正後はゆるやかな表現に変わります)。
また、表は「日常生活動作」と「問題行動」に分かれていますが、介護保険法上の要介護認定のレベルでいうと、要介護2~3程度と言われていました。

この旧基準が何を根拠に定められていたかというと、その根拠が明らかにされている資料があります。
判断基準の見直しにあたって『介護休業制度における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」に関する研究会』が開催されましたが、その第1回研究会の下記資料です。

参考資料1 「常時介護を必要とする状態」の判断基準について

この資料の2ページ以降に「老人ホームへの入所措置等の指針について」という昭和62年の資料が掲げられていて、この資料の判断となる表がほぼそのまま採用されていることがわかります。

介護保険制度ができる前の、施設へ入所する際の判断基準が、介護開始時点で84.3%の介護者が在宅で介護を行っている(同資料5ページ)最近の状況にフィットするわけもなく、見直されることとなりました。

(つづく)


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