社会保障・労働分野の様々な計画の内容⑤

2019年8月19日 | から管理者 | ファイル: 未分類.
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『経済財政運営と改革の基本方針2019』(骨太の方針)の内容

「骨太の方針」のうち、下記2項目については、前回ご紹介した「成長戦略実行計画」とまったく同じ文言が採用されています(13ページ~)。

・70歳までの就業機会確保
・中途採用、経験者採用の促進

また、

・働き方改革の推進(23ページ~)

については、すでに施行が始まっている働き方改革関連法の円滑な施行、周知徹底に言及しているほか「規制改革実施計画」においても取り上げられていた介護休暇の時間単位取得が可能となるよう法令の見直しを行う、とされています。

多様な就労・社会参加に向けた年金制度改革等

58ページに(多様な就労・社会参加に向けた年金制度改革等)という項目があります。大きく分けると下記二つの項目について検討を行うという計画です。

・勤労者皆社会保険制度の実現を目指した検討
・在職老齢年金の在り方の検討

勤労者皆社会保険制度の実現を目指した検討

勤労者皆社会保険制度というとまだ聞きなれない感じがしますが、58ページの脚注を見ると「被用者保険の更なる適用拡大」という説明があり、あくまでも適用の拡大であって必ずしも文字どおり直ちにすべての短時間労働者等を社会保険の適用とするわけではなさそうです。

500人を超える事業所を対象に、週20時間以上などの要件を満たす者を被保険者とする適用拡大は平成28(2016)年10月1日から始まっていますが、更なる適用拡大に向けて、すでに厚生労働省では「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」が行われているところです。

一方で最低賃金が大きく引き上げられているということもあり、扶養の範囲内で働くということが重要である場合、賃金が引き上げられると労働時間を減らさざるを得ないという事態も起きがちであり、扶養の認定基準のあり方も含めた検討が求められているところです。

在職老齢年金の在り方の検討

成長戦略実行計画と同様に「将来的な制度の廃止も展望しつつ、社会保障審議会での議論を経て、速やかに制度の見直しを行う」との文言が見受けられます。
すでに廃止が決定したかのような報道等も見受けらるのですが、計画には上記のような文言があるのみです。
廃止が与党の公約になっているといった記事もありましたが、中身を検証すると「見直しを検討する」との文言だけであり、今後の社会保障審議会での具体的な検討状況を見守る必要がありそうです。

おわりに

例えば「副業の際の労働時間の通算」についても、労働時間を通算しない方向になったことが決まったかのような記事も見受けられましたが、その後の報道を見ると、今後の具体的な審議にあたっては、通算しないという結論にはなかなか難航が予想されるという記事も出てきました。

複数回にわたってご紹介してきた内容は、あくまでも「計画」であるという認識を持って、いずれも今後の具体的な検討を冷静に見守る必要があります。


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