成長戦略実行計画の内容
今回は、成長戦略実行計画を見ていきます。社会保障・労働分野に関わるものは、下記のとおりです。
・70歳までの就業機会確保
・中途採用・経験者採用の促進
実はこれらの項目、ご関心のある方は計画の目次をご覧いただきたいのですが、「第3章 全世代社会保障への改革」という章名の章の中に入っています。
項目名を素直に読めばこれらの施策はまさに「雇用改革」の分野なのですが、「社会保障の担い手を増やす」という意味合いで括られているようです。
「70歳までの就業機会確保」の計画内容
該当部分が長いためすべての引用は避けますが(32~33ページのあたり)、第一段階として努力義務を導入、第二段階としての義務化はあくまでもこれから「検討する」という表現になっています。
また、現行の65歳までの「ガチガチの」義務化とは異なり多様な選択肢を持った、ゆるめのイメージとなることも書かれています。
よくある反応として「70歳まで働かなければならないなんてツラい」といったものがあります。
あくまでも企業に課せられる、継続雇用を希望される方に対しての(努力)義務の話なのですが、法律の話というのはなかなか伝わりづらいものだなと思います。
このような反応の背後にあるのが、年金制度改革との関連です。「70歳までの雇用が(努力)義務になるならば、(現在原則65歳支給の)年金の支給開始年齢も70歳に引き上げられるのでは?」という疑心暗鬼に陥るのは当然のことでしょう。
年金制度改革
このような疑問が湧きおこるのは当然想定していて、この件に関して、(年金制度との関連)という項(33ページ)で、次のように言い切っています。
70歳までの就業機会の確保に伴い、現在65歳からになっている年金支給開始年齢の引き上げは行わない。
年金の支給開始年齢が引き上げられるという誤解が蔓延しているのは、引き続き記載されている別の制度改革が計画されているからと思われます。
他方、現在60歳から70歳まで自分で選択可能となっている年金受給開始の時期については、70歳以降も選択できるよう、その範囲を拡大する。
今、見直しが検討されているのは、自由に選択が可能な年金の支給開始年齢の繰上げ・繰下げ制度(原則65歳支給のところ、繰り上げると減額支給され、繰り下げると増額支給される制度)です。
繰下げ制度は、現在70歳まで認められていますが、70歳以降に繰り下げることができるようにする、という選択肢を広げるだけの見直しなのですが、この制度改革との混同が見受けられるようです。
また、在職老齢年金制度(60歳以降、雇用されて厚生年金に加入すると、年金額と所得額に応じて、年金が減額される制度)については、
加えて、在職老齢年金制度について、公平性に留意した上で、就労意欲を阻害しない観点から、将来的な制度の廃止も展望しつつ、社会保障審議会での議論を経て、速やかに制度の見直しを行う。
との記載があり、現時点では「廃止を展望」という表現にとどめられていることがわかります。
もちろん「年金の支給開始年齢の引き上げを行わなくて本当に大丈夫なのか」という視点も欠かせませんが、小欄では、計画に記載されていることの紹介にとどめます。
「70歳までの就業機会確保」のスケジュール
33ページ(提出時期及び留意点) に、
手続的には、労働政策審議会における審議を経て、2020年の通常国会において、第一段階の法案提出を図る。
とあるものの、施行時期については、
混乱が生じないよう、65歳(現在63歳。2025年に施行完了予定)までの現行法制度は、改正を検討しないこととする。
とされています。周知期間を長く置き、長期的なスパンでの実行が想定されているようです。
中途採用・経験者採用の促進
こちらは具体的な施策内容は乏しく、
政府としては、個々の大企業に対し、中途採用・経験者採用比率の情報公開を求めるといった対応を図る。
といった表現が見受けられるくらいです。
「70歳までの就業機会確保」を実現するためには一企業の努力だけではなく、中途採用市場の拡大が必須であるという意味合いで、「70歳までの就業機会確保」と一緒にこの章で取り上げられています。具体的な施策は、他の会議体などで検討され公表されることとなるでしょう。
(つづく)
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