いわゆるデジタルファースト法が先日可決、成立し、
①デジタルファースト(電子化)
②ワンスオンリー(同一情報の提供を求めない)
③ワンストップ(手続を一度で行える)
という3原則に則り、これらの動きが加速していくものと思われます。
そんな中、それほど大きな影響あるものではありませんが、算定基礎届の運用についての細かな改正が周知され始めました。
国の出先機関ごとの独自の運用ルール(いわゆるローカル・ルール)の撤廃
行政手続に関する規制改革は、上記のようなデジタル化以外にも多角的な検討が行わていて、地域によって細かな運用のルールが違うことが起きている状況を課題として取り上げ、これらを撤廃すべきであるというスタンスでの検討も行われています。
平成30(2018)年4月24日に公表された規制改革推進会議の「行政手続部会取りまとめ」(行政手続コスト削減に向けて)という報告書には、下記のような表現が見受けられます(30ページ)。
国の出先機関ごとの独自の運用ルールについては、本部会として事業者から実態を聴取したところ、許認可の一部や社会保険においていまだ残っている実態が判明したため、所要の改善を求めた。各省庁においては、受け身に対応するだけでなく、積極的に事業者側から実態を聴取し、ローカル・ルールが残っていないかを確認し、全国レベルでの統一的な運用を図ることが求められる。
ご指摘のとおり!よく言った!と思われる方も多数いらっしゃるのではないでしょうか。
例えば、A県のとある出先機関ではとある添付書類が求められていないのに、B県のとある出先機関では求められる、といったことはきりがなく、対応に苦慮することがよくあります。
算定と月変の微妙な関係
7・8・9月の月変に該当する方は算定の対象にはならないわけですが、8・9月月変に該当するかどうかは算定を提出する時点ではわからないため、ジレンマが生じます。
すなわち、5月昇給や6月昇給で、8・9月月変に該当しそうな方まで、算定をいったん出さなければいけないのか…というものです。
例えば、被保険者が1,000人いて、6月昇給が900人おり、その半数くらいが9月月変に該当しそうといったときに、500人弱の算定を本当に出さなければいけないのだろうか、「7・8・9月の月変に該当する方は算定の対象にはなりません」とおっしゃっているのに…、ということです。
手引きによる解説
「平成30年度版 算定基礎届・月額変更届の手引き」は、この点について、下記のような説明をしています(14ページ、モノによってページが異なる場合があります)。
〇算定基礎届を提出後に、8月改定または9月改定の月額変更に該当した方については、月額変更が優先されるため、別途「月額変更届」の提出が必要となります。
〇都道府県によっては、8月・9月の月額変更等の予定者について算定基礎届の提出をしていただく場合があります。
なかなか絶妙な言い回しと言いますか、わかったようでわからない感じもしますが、8月・9月の月額変更等予定者も含め全員算定を提出していただく、というスタンスを俗に「地方ルール」と言います。一方で、8月・9月の月額変更等の予定者については算定を出さなくていいですよ、というスタンスは俗に「東京ルール」と称されています。
全国津々浦々の状況を把握しているわけではありませんが、「場合があります」という言い回しは、俗に言う「東京ルール」を許容している地域が東京以外にも少なからずあるのだろうと推察されます。
そして、今回の改正
そして、令和元年度の算定基礎届の提出から、これらローカル・ルールの全国レベルでの統一的な運用が図られました。
・日本年金機構 「8月、9月の随時改定予定者にかかる算定基礎届の提出について」
要は、すべて「東京ルール」に統一する、ということです。
筆者は長年、この問題をどちらでもいいのでは(=どちらの提出方法でも問題ないのでは)、と考えておりました。
なぜなら、「月変対象予定者」とは一体何なのか、という定義があいまいであり、けっこういい加減なものだからです。多くのシステムは、昇給があったという1要素だけをもって「月変対象予定者」として抽出してきますが、厳密な意味ではそうではないとも言えるし、予定者と言えば予定者なのかもしれません。一方で、昇給幅だけで2等級上がったらそれは予定者でしょ、ということになるかもしれませんが、8月に欠勤するかもしれず、7月10日の時点では、だれもわからない「八卦」の世界であって、「この人は月変対象者です。」という主張は、言ったもん勝ちという側面があります。
今回の件を受けて、今まで「地方ルール」に則ってきた方々にとっては、やはり今までどおり、7月10日の時点で全被保険者の算定を出さないと気持ちが悪い、と感じる方もおられるかと思います。ただこれは、あくまでも「届出を省略することが可能」となっただけなので、省略せずに全員出すことも可能であり、両方の提出方法が全国で選択可能となったと理解できると思います。
行政手続部会報告書に基づき、このようなローカル・ルールの撤廃がどんどんと進んでいくことを望みます。
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