副業解禁!問題を振り返る
ちょうど1年ほど前、厚生労働省のモデル就業規則が改正されました。
労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定が削除され、副業・兼業についての規定が新設されたというものです。
これにより、厚生労働省としては、副業・兼業の普及促進を図っていくという方針を打ち出す一方で、もちろんモデル就業規則には何ら法的な拘束力などはないわけですが、マスコミ的にはいわゆる「副業解禁!」と取り上げられそこそこ話題になったあの頃からもう1年がたとうとしています。
この他にも「副業・兼業の促進に関するガイドライン」なども公表されましたが、これらをまとめたサイトは下記となります。
・厚生労働省 「副業・兼業」特設サイト
働き方改革実行計画における、検討を進めるとの記載
以上のことだけでなく、平成29(2017)年3月28日に決定された「働き方改革実現会議」による「働き方改革実行計画」の中の「5 柔軟な働き方がしやすい環境整備」という大項目のうち「(3) 副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改訂版モデル就業規則の策定」においては、
さらに、複数の事業所で働く方の保護等の観点や副業・兼業を普及促進させる観点から、雇用保険及び社会保険の公平な制度の在り方、労働時間管理及び健康管理の在り方、労災保険給付の在り方について、検討を進める。
という記載もありました。これらの現行の制度が必ずしも副業を想定したものにはなっていないため、副業・兼業を普及促進させる観点から検討を進めるべきとの内容です。
複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会
これを受け、平成30(2018)年1月から昨年末まで、7回にわたって「複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会」が行われ、その報告書が取りまとめられました。
この報告書を読みますと、冒頭から、
複数の事業所で雇用される者(いわゆるマルチジョブホルダー)に対する雇用保険の適用については、…
という表現が出てきて、マルチジョブホルダーって、一体何?という感じがします。意味は何となく伝わってくるのですが、誰も使っていない言葉をあえて「いわゆる」として言い換える必要があるのか、他では使われていない言葉をなぜ雇用保険のときだけ持ち出すのか不思議であり、そろそろこの言葉を使うことをやめた方がいいのではないかと個人的には思っています。
検討の結果
さて、どうやら検討した結果「マルチジョブホルダー」への雇用保険の適用は必要性が高くないということで、具体的な制度改正は見送られる方向性であるようです。
その理由としては、
・合算して週20時間以上となる人の人数が極めて少ない(アンケート対象約13万人のうち、371人)
・複数の雇用のうち、いずれか一つを離職し、残る雇用で賃金を得つつ、求職活動を行う状態(部分失業)が多いと想定される
などといったものが指摘されています。
マルチジョブホルダーへの雇用保険の適用問題は、今般の副業解禁の文脈で突然出てきたわけではなく、以前から指摘されていたことで、報告書にも、
また、雇用保険法等の一部を改正する法律(平成 29 年法律第 14 号)の国会審議においても、「いわゆるマルチジョブホルダーについては、雇用保険の適用に向けて、早期に専門家による検討を行い、必要な措置を講ずること」との附帯決議が行われており、昨今、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用の検討の必要性が、多く指摘されているところである。
といった表現も見受けられるところで、何らかの対応がなされるのかと思っていましたら、意外にも何もしなさそうという方向に落ち着きそうです。
この他、労働時間の通算問題と労災保険給付についての検討が引き続き行われています。
【この記事の改正データベース(法改部)はこちら】
タグ: 副業雇用保険
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