オンライン資格確認の導入とマイナンバーカード

2019年2月15日 | から管理者 | ファイル: 健康保険法.
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現在召集されている第198回国会への提出予定法案の中で、健康保険法の改正法案については、小欄下記記事にてその改正項目の一部をご紹介させていただきました。

・平成31(2019)年1月25日付 「健康保険の被扶養者要件(国内居住要件)についての改正案が示されました」

実はこの法案、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(仮称)」というやや仰々しい名称となる予定であるとおり、他にもいくつかの改正項目が含まれています。
その中で、企業実務にも大きな影響のありそうな項目がオンライン資格確認の導入です。

「オンライン資格確認」の導入

保険証(健康保険被保険者証)は、以前の「世帯別の紙」から「個人別のカード」への変更はあったものの、写真はなく偽造も比較的容易な中、医療機関にとっては保険証を持ってきた人はその保険証の資格を有していると信じ、所定の手続を進めるしかない状況は変わりがない状態が依然として続いています。

偽造は全体から見るとほんの一部かもしれませんが、退職してその会社の保険証は使えなくなっているにもかかわらず使ってしまって、その後の手続が大変なことになるというケースは多くあります。
「資格喪失後の無資格受診」と言われ、その費用の返還を含めた調整の事務手続は非常に煩雑なため、長らく問題となっていました。

これらの問題を解決すべく検討されていた「保険証を持ってきたその人が、本当にその保険証の資格を有しているのか」を病院の窓口でオンラインにて瞬時に確認できるしくみがいよいよ導入されることとなりました。

「保険証番号」問題

これを進めるにあたり、新たなシステム開発は当然ですが、越えなければならないハードルがあります。保険証は「個人別のカード」になってはいるものの、個人別の番号というものがありません。被保険者ごとの番号はあるものの、扶養家族(被扶養者)ごとの番号はないわけです。
そこで、まず、世帯単位番号に2桁の枝番号を追加するという処置がなされます。詳しくお知りになりたい方は、平成30(2018)年12月6日に開催された「第116回社会保障審議会医療保険部会」の下記資料をご参照ください。

・資料3 オンライン資格確認等システムの検討状況

さてそうすると、現在の保険証をすべて回収して、新たに2桁の枝番号が記載された保険証を発行するという膨大な事務が発生するのかなと一瞬思いますが、上記資料の2ページに下記のような記載があります。

○ 発行済の保険証は、2桁番号がなくても使用できることとし、回収・再発行を不要とする。
※ 医療機関・薬局では、患者が2桁番号がない保険証を提示した場合、2桁番号なしでレセプト請求できる。レセコン改修が間に合わなかった場合も、改修までの間、2桁番号なしで請求できることとする。(当分の間)

制度施行後新たに発行される保険証は2桁番号を記載していくものの、すでに発行されている保険証は当分の間そのまま使える、という整理になったようです。

そして、マイナンバーカードとの関連

平成31(2019)年2月14日付日本経済新聞1面に「マイナンバーが保険証」という見出しの記事が大きく出ました。ただこれは、オンライン資格確認を「2桁の枝番号がない現保険証」や「2桁の枝番号がある新保険証」だけでなく、マイナンバーカードでも(技術的には)できるようにするということであって、21年から直ちに、保険証がマイナンバーカードに取って代わられるということではありません。よく読めば、

健康保険組合の判断で健康保険証をマイナンバーに切り替えれば、保険証の発行コストはなくなる。

と記事にもありますし、当面「2桁の枝番号がない現保険証」を使えるようにするという措置を考慮しますと、なかなかすぐには切り替えは進んでいかないでしょう。
冒頭お伝えした「紙の保険証」は、2001年のカード式の導入から20年経とうとしている今も使われている保険者が一部残っているようですが、そこまでいかないにしても、移行には相当の期間を要することが想像されます。

施行予定日

上記改正法案によれば、施行日は「公布日から2年以内の政令で定める日」とされています。
導入スケジュールのイメージは、資料「オンライン資格確認等システムの検討状況」の5ページをご参照ください。2021年4月頃が見込まれているようです。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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