平成31年4月1日施行 労働安全衛生法の改正について④

2019年1月18日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働安全衛生法.
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③長時間労働者への面接指導

長時間労働者に対する面接指導についての改正は、大きく分けて下記の二つです。

①三つのカテゴリーへ分類(二つのカテゴリーが新設)
②対象者となる時間数の改正

これまで長時間労働者への面接指導は特段分類というものはありませんでしたが、3つのカテゴリーになります。

1 すべての労働者(高プロ適用者を除く)に対して適用される面接指導
2 新商品の研究開発業務従事者に対する面接指導
3 高度プロフェッショナル制適用者に対する面接指導

(1) 適用対象となる時間数が100時間超から80時間超に

1は今までもあったわけですが、対象者となる週40時間を超えた時間数に下表のとおり改正が行われます。申出があった労働者に対して行うという要件は変わりありません。

現行 改正後
時間外・休日労働時間数 1か月あたり100時間超 1か月あたり80時間超

ちなみに現行は「1か月あたり80時間超」は努力義務とされています。
なお、この現行の努力義務基準である「80時間超」がどこに書かれているかというと、施行規則ではなく、通達に書かれています。行政によるリーフレットでは、施行規則の第52条の8第2項に書かれているような雰囲気で示されているものあるのですが、実はここには「長時間の労働により…」という漠然とした表現しかなく、通達(平成18年2月24日 基発第0224003号)に、

第2項第1号の「長時間」とは時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えることをいうこと。

という解釈が示されています。

また、この「すべての労働者(高プロ適用者を除く)に対して適用される面接指導」は改正前も後も罰則の適用はありません。

(2) 研究開発業務従事者は、二段階に

新設される2についてですが、「新商品の研究開発業務従事者」で週40時間を超えた時間が「1か月100時間を超えた者」については、申出の要件なく面接指導を行わなければならないこととなりました。
したがいまして「新商品の研究開発業務従事者」は、80時間超~100時間以下の場合は申出要件あり、100時間超で申出要件なしといった具合に、二段階で見ていく必要が出てくるということです。

労基法では時間外労働の上限規制の適用除外となったため、100時間超の場合に申出なしでも面接指導を行い、健康管理を徹底することとなったわけです。この「新商品の研究開発業務従事者に対する面接指導」には罰則の適用があります。

(3) 高プロ適用者は「健康管理時間」が100時間超となったとき

3の高度プロフェッショナル制適用者に対する面接指導は、労基法の労働時間に関する規定が適用除外されることから、新たにできる概念である「健康管理時間」が、週40時間を超えた一定の時間を超える者に対して面接指導を行わなければならないこととなりました。この時間数は施行規則で定められることとなっています。今のところ(1/18現在)公布までに至っていませんが、省令案要綱(9ページ)では「1ヶ月あたり100時間」とされています。

・第151回労働政策審議会労働条件分科会 資料「労働基準法施行規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」

なお、健康管理時間とは、原則的には「労働者が事業場内にいた時間」と「事業場外において労働した時間」との合計の時間とされています。この「高度プロフェッショナル制適用者に対する面接指導」にも罰則の適用があります。

(4) 労働者への通知義務

上記のほか細かな改正ですが、すでにきちんと面接指導を運用している企業にとっては、不思議に思われるかもしれない改正があります。1ヶ月80時間超の時間外・休日労働を行った労働者に対して、その旨を通知しなければならない、という改正です。
そらあ、面接指導の申出をしてもらうためには該当者に通知しなきゃ実務が流れていかないでしょ、という感じもしますが、この度、このような細かな規定が施行規則に置かれました。産業医への通知義務は前回の平成29年6月1日施行の改正時に加わったのですが、遅ればせながら、本人への通知義務が盛り込まれることとなりました。
通知の時期は「速やかに」(おおむね2週間以内)行わなければならないとされました。

(5) 経過措置

面接指導に関する経過措置については、小欄下記記事をご参照ください。

・平成30(2018)年8月31日付 長時間労働者に対する面接指導の改正に関する経過措置

次回は、面接指導を適正に行うために、すべての労働者について労働時間の状況の把握をすることが義務化されるという改正です。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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