平成31年4月1日施行 労働安全衛生法の改正について③

2019年1月16日 | から管理者 | ファイル: 働き方改革関連法, 労働安全衛生法.
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②産業保健機能の強化

下記の3つの項目に分けてご紹介していきます。

(1) 手続面の改正
(2) 産業医にまつわる改正
(3) 労働者からの健康相談に対応するための体制整備(努力義務)

(1) 手続面の改正

まずは細かな手続的なところの改正です。

項目 内容
A 勧告があったときの手続 ・3年間、記録を保存しなければならない。
・(安全)衛生委員会へ報告しなければならない。
B (安全)衛生委員会の議事録 ・委員会の意見
・意見を踏まえて講じた措置の内容
・その他重要なもの

Aは前回にて紹介した「勧告」にまつわる手続ですが、そもそも「勧告」が出される場面がめったにあるわけではないのでそれほど気にしなくてもよさそうですが、(安全)衛生委員会へ報告しなければなくなるという点は多少留意が必要かもしれません。

Bはこれまでも議事録の作成義務(3年間)はあったわけですが、「重要なもの」という漠然とした表現しかなったため、上表に整理した内容を記録するよう改めて明確化された、という改正です。委員会をきちんと運営している企業にとっては、すでにできていることではないかと思われます。

(2) 産業医にまつわる改正

前回、産業医が主語となる改正についてはご紹介しましたが、ここで紹介するのは、事業者が主語となる改正です。

項目 内容
C 産業医への権限の付与 ・事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること
・労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集すること
・労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること
D 産業医への情報提供義務 ①就業上の措置の内容
②長時間労働者に関する情報
③労働者の業務に関する情報であって、産業医が健康管理を行うために必要と認めるもの

Cは、これまでも「産業医が労働者の健康管理等をなし得る権限を与えなければならない」という漠然とした表現はあったのですが、その内容が明確化されたという改正です。

Dのうち②は今もある義務で、今回、①と③が加わります。
健康診断、長時間労働面接、ストレスチェックの高ストレス者面接の実施後に産業医の意見聴取をするものの、その後その意見を受けて事業者がどのような措置を講じたかは、産業医にとってはわからないという構図に法律上はなっていますが、この度、講じた措置の内容または措置を講じない場合はその理由を、産業医に提供しなければならなくなるというのが①の改正です。
この情報提供を受けることにより、産業医は、最終的に勧告までをも行う必要があるか否かの判断ができるようになるというわけです。

②は、前回改正(平成29年6月1日施行)で加わった義務ですが、この度、面接指導の対象となる時間が100時間から80時間に改正されることに伴い、情報提供の基準も改正されることになります。情報提供義務という枠組みの中の一項目として括られることとなります。

③は一体どんな情報?といった感じですが、先般発出された下記解釈通知にその内容が明記されました。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」 (平成30年12月28日基発1228第16号)

問6の回答として、下記記載があります。

①労働者の作業環境、②労働時間、③作業態様、④作業負荷の状況、⑤深夜業等の回数・時間数などのうち、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるものが含まれる。

なお、以上の「情報提供義務」は、労働者50人未満で産業医の選任義務はないものの、医師等に健康管理を行わせることとしている事業場については努力義務となっています。

(3) 労働者からの健康相談に対応するための体制整備(努力義務)

努力義務ではありますが、産業医等が労働者からの健康相談に適切に対応するために必要な体制の整備等を講ずるように努めなければならない、という規定が加わりました。
この規定については、産業医の選任義務のある労働者50人以上の事業場も、労働者50人未満で産業医の選任義務はないものの医師等に健康管理を行わせることとしている事業場も、両方とも努力義務ということです。

一体何をすればいいのか、という点については、上記解釈通知の問8の答えとして記載がありますが、長いため引用は省略しますので、ご興味のある方は4ページをご参照ください。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら

 

 


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