就活の新ルールが決定された件

2018年10月31日 | から管理者 | ファイル: 未分類.
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平成30(2018)年9月、経団連が策定してきた「採用選考に関する指針」(俗にいう「就活ルール」)の今後のあり方について、議論が必要だとの認識が示されて以来、就活ルールの見直しに関する議論が行われてきましたが、このたび政府が新たな就活ルールを定めたとの報道がなされています。

9月3日 中西会長の定例記者会見 『経団連が採用選考に関する指針を定め、日程の采配をしていることには違和感を覚える』
10月9日 中西会長の定例記者会見 『本日の会長・副会長会議において、2021年度以降に入社する学生を対象とする採用選考に関する指針を策定しないことと決まった。』
10月9日 「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」設置
10月29日 第2回「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」 「2020 年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」公表

この間の経緯をまとめると上表のとおりとなりますが、表にして見ると、ことが大きい話の割にはごく短かい期間で話が運んでいるようにも思えます。ちなみに、報道などでは「経団連が就活ルールを廃止!」などの見出しが躍っていますが、経団連からすると「新たな指針は策定しない」ということとなるようです。

「新ルール」は、新しくもなく、ルールでもない?

「2020 年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」において、「3.本連絡会議としての結論」で「経済団体・業界団体に対して、2020 年度卒業・修了予定者の就職・採用活動に関する要請を行う。」として、下記の日程が示されました。

・ 広報活動開始 :卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
・ 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
・ 正式な内定日 :卒業・修了年度の 10 月1日以降

ルールを決める場が変わったものの、ご承知のとおり、その内容は変わっていません。内容を変えるということであれば時間を要するでしょうが、何も変わっていないからこそ、短期間での公表が可能となったともいえるでしょう。
経団連の「採用選考に関する指針」をご参照ください。日程についての文言はほとんど変わっていないことが確認できますが、経団連は示された日程に基づいて「行動する。」という宣言であるのに対し、連絡会議としては日程に基づいて行動するよう「要請を行う。」といったように「動詞」が変わることとなります。

政府が主導するルールとなるため、対象となる企業は経団連会員企業だけでなくなるわけで、普通ならこれで一安心となりそうですが、そうは問屋が卸さず、むしろ「就活は早まる」といった見解が新聞記事などにも見られます。ルールは「学生が学修時間等を確保しながら安心して就職活動に取り組むことができるよう」にするためであるにもかかわらず、そうならないのはなぜなのでしょうか。

一つは、法律における規制ではないため当然罰則はないということです。「ルールは破るためにある」の典型なのでしょうか。
もう一つは、単なる日程の問題ではなく、「新卒一括採用」自体が、今すぐにではないものの見直されるべきであるなどの、より大きな議論が展開されようとしている背景があることです。
最近話題の未来投資会議においても、新卒一括採用は単独でなく「高齢者雇用促進及び中途採用拡大・新卒一括採用見直し」というテーマにくくられ、高齢者雇用や中途採用の促進・拡大という課題と一緒に議論されようとしているところです。

未来投資会議(第20回) 配布資料

企業と学生のマッチングをAIがやればよいではないか、そうすれば今の様々な負担、苦労はなくなる、という見解もあるようですが、「新卒一括採用」というシステムが日本における若年失業率の低さに寄与してきたことも間違いありません。ルールの改廃や是非にかかわらず、徐々に変化が進行していき、気づいたら、そんな時代もあったねと話す日が来るのではないでしょうか。


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