育児休業を取得している方が保育園への入園を申し込む際に、市町村から「就労証明書」という書類を提出することを求められます。
勤務先の労働時間や、育児休業の取得予定期間など様々な項目を記載しなければならないわけですが、お勤めの方の場合、本人が記載するわけではなく、勤務先が記載して会社印を押して証明するという流れとなっています。
記載項目は多岐にわたっており、育児休業者が常時50人とか100人とかいる企業にとっては、人事担当者の負担は相当なものでした。
地味ではあるが、画期的な改革
企業の「何とかならないものか」という声を受け、以前だったら何ともならないような事項であったように思われますが、この度、平成30(2018)年10月1日から、以前と比べると便利になる制度改正が行われました。
プロセス全体が劇的に改善されたわけではないため「以前と比べると」という注釈付きですが、何が変わって何がそんなに変わっていないのかを理解するためには、就労証明書の提出のプロセスごとに見ていく必要があります。
ちなみに、関連するWEBサイトは、こちらになります。
・ぴったりサービス(内閣府)
何がぴったりサービスなのか?
まずは「ぴったりサービス」って突然言われていも、抽象的過ぎて意味が分からない感じですが、Q&Aに下記のような解説があります。
地方公共団体が提供している行政サービスを検索したり、オンライン申請できるサービスの総称になります。まずは子育て分野からサービスの提供を開始します。
今後このような壮大な構想があるため、「子育てぴったりサービス」ではないわけですね。
・ぴったりサービス
┗・子育て分野に関する手続
┗・就労証明書作成コーナー
上記のような階層構造になっていることをまずは理解しておきましょう。
就労証明書提出までのプロセス
大まかなプロセスは下記のとおりとなりますが、
①就労証明書の様式を市町村役所からもらう(本人)
②就労証明書を記入する(会社)
③就労証明書を市町村役所に提出する(本人)
大きく分けて、①・②までと③に分けてみていく必要があります。
①と②が「就労証明書作成コーナー」で可能なプロセスです。
すなわち、
①本人が市町村役所に出向くことなく、会社担当者が全国の様式をダウンロードできるようになった
②紙に記入していたが、画面上に入力できるようになった(さらにはAPI連携も可能)
以上、「就労証明書作成コーナー」は全市町村の様式に対応している、との説明がなされています。
しかしながら、最後のプロセス③は、上記階層構造の「子育て分野に関する手続」の中の一つの手続に位置付けられますが、急に不便さが解消されていない事態に出くわします。Q&Aに下記のような説明がなされています。
保育所等の入所希望者は、マイナポータルの「ぴったりサービス」を利用して、市町村へ赴くことなく、電子申請を行うことができます(※)。
※ 電子申請できる市町村は、約3割です。市町村の対応の有無は、「ぴったりサービス」でご確認いただくか、市町村にお問い合わせください。
※ 電子申請には、マイナンバーカードが必要です。
※ 電子申請の際に、就労証明書を写真撮影したファイルをアップロードします。
※ 別途、就労証明書の提出を要する市町村もあります。
対応できる市町村が3割、マイナンバーカードが必要、別途原本提出が必要、などといったハードルに立ち尽くすわけです。
デジタルファーストの大きな流れの中で
本件も、規制改革推進会議における行政手続電子化(デジタルファースト)の大きな流れの中で検討されてきたものです(例えば参考資料として、平成30年7月9日「規制改革推進会議 第11回行政手続部会」の下記資料)。
筆者は、本件は他の案件に比べてプライオリティが高くなく、これほど早く実現するとは思っていませんでした。なぜなら、大企業で育児休業取得者がたくさんいる企業には大きな影響がありますが、まったく、または、あまり関係のない企業も多数存在するのと、全国の市町村との調整の必要があるためです。
この度の就労証明書の件を例に、あえて細かくプロセスを見てきましたが「電子化」とひとことで言っても、全体のプロセスの中で何が電子化されて何がそうでもないままなのか、ということをわかっていないと、かえって手間がかかるといったような事態に陥る可能性があることを理解しておく必要があるでしょう。
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