副業推進にまつわる労働時間の通算問題①

2018年5月17日 | から管理者 | ファイル: 副業・兼業, 労働基準法.
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平成30(2018)年1月31日に厚生労働省のモデル就業規則が改正された件については、小欄下記記事において取り上げさせていただきました。

・平成30年2月17日付 「副業解禁」を整理する

その後も各種メディアにおいて断続的に本件が取り上げられていますが、当初のようなセンセーショナルな取り上げ方は減り、落ち着いて本質を捉えようとする内容が増えてきているようです。

その内容を端的にまとめると、次のようになるでしょう。

(「副業解禁」と言われるとあたかも規制が緩和されたような誤解も見受けられるが)実際のところ法律が改正されたわけではないので、規制が緩和されたわけでもない。
厚生労働省のモデル就業規則が変更されただけなので、あくまでも各企業において副業をどう考えるかについては自由であることに変わりはない。
しかしながら、国が副業を推進する立場に取って代わったにもかかわらず、労働時間や社会保険についてのルールに変更がないままであるため、副業者への適用を想定できていないものあり、結果として副業の推進を阻害してしまっている(=「副業フレンドリー」になっていない)状況はいかがなものか。

働き方改革の中の一つの項目として存在する副業推進

副業の推進については、平成29(2017)年3月28日に決定された「働き方改革実現会議」による「働き方改革実行計画」の中の「5 柔軟な働き方がしやすい環境整備」という大項目のうち「(3) 副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改訂版モデル就業規則の策定」において、

副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、 副業・兼業の普及促進を図る。

としたうえで、

(中略)企業が副業・兼業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込んだガイドラインを策定し、副業・ 兼業を認める方向でモデル就業規則を改定する。

と宣言しているほか、

(中略)さらに、複数の事業所で働く方の保護等の観点や副業・兼業を普及促進させる観点から、雇用保険及び社会保険の公平な制度の在り方、労働時間管理及び健康管理の在り方、労災保険給付の在り方について、検討を進める。

といった記載も見られます。
ただし、よくよく読むと「モデル就業規則」については「改定する。」と言い切っているのに対して、社会保険や労働時間管理については、「検討を進める。」とやや弱気な表現になってしまっていることがわかります。

検討が一応始まっている雇用保険の適用

小欄下記記事にて取り上げさせていただきましたとおり、

・平成30年2月24日付 複数の事業所で雇用される者の雇用保険の適用

雇用保険の適用関係のように実際に検討がすでに始まっているものもあるものの、1月31日に第1回が行われた「複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会」は、4か月が経とうとしている中、その後第2回が行われた形跡が残念ながらありません。

主題となる労働時間の通算問題

各種社会保険の適用はさておき、最大の関心事は労働基準法第38条の解釈となるわけですが、

〇労働基準法
(時間計算)
第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
(第2項 略)

この点については次回以降掘り下げさせていただきます。


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