無期転換ルールが施行から間もなく5年を迎える件

2018年3月23日 | から管理者 | ファイル: 労働契約法.
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平成25(2017)年4月1日に施行されたいわゆる無期転換ルールがまもなく満5年となり、多くの有期労働契約者に無期転換申込権が発生する時期を迎えようとしています。

厚生労働省は積極的に周知を行っており、

・厚生労働省 「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」

報道などでは、5年以内での雇止めという副作用が発生している事案が少なからず発生していることが取り上げられているところです。
一方で昨今の人手不足の状況から、法改正を待つことなく、積極的に無期転換や正社員化を進めている企業が少なからず存在することも事実です。

法改正の詳細や企業の動向は他に譲るとして、今一度、原点に返って、有期契約、無期契約とは何なのかということを考察してみたいと思います。と言いますのも、厚生労働省の上記サイト(例えばこちら)に「有期契約労働者」の定義について『「契約社員」「アルバイト」などと呼ばれている社員のことです。』というざっくりとした説明がされているのですが、若干の違和感を感じないでしょうか。

もちろん一般的には、正社員は契約期間の定めがなく、契約社員は「契約」と言っている以上有期契約ですが、アルバイトやパートは労働時間が短いだけで必ずしも有期契約ではない場合も散見されます。
それはそもそも、労働契約書や労働条件通知書が取り交わされておらず、口頭でも特段有期契約であることの合意がなされていないようなケースであり、そのような場合は「期間の定めのない労働契約」と評価されてしまうでしょう。

労働契約法の改正法が施行された平成25年4月1日以前から、上記のような「期間の定めのないアルバイト・パート」は少なからず存在していました。
「アルバイト」「パート」は法律上の定義のある用語ではなく、労働時間が正社員よりも短い「短時間労働者」を指す呼称というだけであって、有期契約にしようが無期契約にしようが、法律上の規制はなく、企業の自由であるわけです。

このことを踏まえますと、そもそも「アルバイト」「パート」についても特段労働契約期間の定めをしておらず「期間の定めのない労働契約」であるならば、無期転換ルールはまったく関係ないわけです。
そして一方で、平成25年4月1日の前までは「期間の定めのない労働契約」であった「アルバイト」「パート」を有期契約に転換するというもう一つの副作用も散見されました。そのような方々にとっては、5年の歳月を経て無期転換に戻る権利が発生するわけです。

定年制や、解雇の困難性、試用期間、休職制度、雇用の流動化など他の様々な側面との兼ね合いも大いにありますが、今一度、有期契約、無期契約とは何なのか、有期契約を締結する意義は何なのかということを、無期転換ルールの前に問い直してみる必要がありそうです。


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