介護休暇・子の看護休暇の時間単位取得を可能とする改正内容が含まれる省令等が昨年末に公布されたことは、小欄下記記事にてお伝えさせていただきました。
・令和2(2020)年1月7日 「子の看護休暇・介護休暇を時間単位とする省令等が公布」
改正そのものは、法律改正の必要がない小さな改正ですが、詳細のところが複雑でややわかりにくい部分もあるため、3回に分けて改正内容をご紹介していきます。
改正の概要
育児・介護休業法施行規則の一部を改正する省令などの改正により、介護休暇・子の看護休暇制度について下記のとおり改正が行われます。
改正前 | 改正後 | |
1日単位 | 労使協定で除外できる者を除き取得可 | (改正なし) |
半日単位 | 1日所定労働時間が4時間以下の者及び労使協定で除外できる者を除き取得可 | ※法律上の制度としてはなくなるが、任意の制度として残る |
時間単位 | - | 新設 |
あえて表にするほどのこともなく、半日単位がなくなって時間単位になるという(だけの)改正なのですが、半日単位という制度が法律上はなくなるものの一部うっすらと残ることになります。この点は後ほど言及しますので、任意の制度として「うっすらと残る」感じをなんとなく覚えておいていただければと思います。
背景と経緯
介護と仕事の両立に向けた施策としては「介護休業(93日)」や「介護休暇(5日)」の期間の延長を検討するという案も出ていましたが、令和元(2019)年6月に公表された「骨太の方針」や「規制改革実施計画」において、介護休暇の時間単位取得が可能となるよう必要な法令の見直しを行うという方針が示されました。
介護休暇は、介護保険の手続や対象家族の通院の付き添いなど日常的な介護のニーズに対応するためのものという位置づけです。認知症介護の場合に突発的な対応が必要とされたり、ケアマネジャーなどの介護専門職との打ち合わせの時間など1日又は半日を必要としない場合も多く、小刻みの取得ができるよう時間単位の取得を検討すべきとされました。
その後、法律の改正は必要ない改正のため、雇用環境・均等分科会での審議を経て、短期間での改正省令等の公布となりました。
『介護休業』は、一般的に介護に専念するための休業であると誤解されがちですが、そもそもは介護の体制を構築するためや「看取り」のためのものと位置づけられているものです。
この期間を長くするよりも、より柔軟で日常的な介護のニーズに対応するための『介護休暇』について、半日単位よりもさらに柔軟化される時間単位での取得を可能とする改正が行われることとなったのは、家族の介護という状況に対して退職という選択肢ではなく、働きながら介護をすることをより容易に、当たり前にしていくというメッセージとも受け止めることができるでしょう。
また、子の看護休暇は介護休暇と法律上ほぼ同じ構造を持っており、同様の小刻みの取得のニーズに対応するため、同時に改正されることととなりました。
過去の改正について
この間の経緯を少し振り返ってみましょう。
介護休暇 | 子の看護休暇 | |
平成17(2005)年4月~ | ― | 1日単位 |
平成22(2010)年6月~ | 1日単位 | |
平成29(2017)年1月~ | ・1日単位 ・半日単位 |
|
令和3(2021)年1月~ | ・1日単位 ・時間単位 |
こうして見ると、介護休暇自体はまだ10年ほどの歴史の浅い制度であることがわかります。平成29年に半日単位が導入されてからわずか4年での更なる柔軟化という改正となりました。
また、同じ年の10月の改正では努力義務で細かな内容の改正ではありますが、下記のような改正もありました。
事業主は、下記の事実を知ったときはその労働者に対して個別に、関連する両立支援制度を周知するための措置を講ずるよう努力しなければならない、とするものです。
・労働者もしくはその配偶者が妊娠・出産したことを知ったとき
・労働者が対象家族を介護していることを知ったとき
職場が育児休業や介護休業等を取得しづらい雰囲気であることを理由に、各種両立支援制度の取得を断念することがないように、育児休業や介護休業をはじめとした両立支援制度を個別に周知するよう努めるという趣旨の改正です。
施行日
令和3年1月1日施行です。
次回以降、さらに詳細に改正内容を見ていきます。
【この記事の改正データベース(法改部)はこちら】
タグ: 介護休暇時間単位取得
コメントは締め切りました。