セクハラ防止対策の実効性向上に向けた検討

2018年11月30日 | から管理者 | ファイル: 男女雇用機会均等法.
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労働政策審議会雇用環境・均等分科会」における検討事項のうち、セクハラ防止対策の実効性の向上についての検討状況をご紹介させていただきます。

6月に出た「セクハラ緊急対策」

今年の春に大きな話題となった前財務次官のセクハラ問題を受け、政府は緊急対策を検討しました。その際に取りまとめられたのが下記資料です。

・すべての女性が輝く社会づくり本部決定 「セクシュアル・ハラスメント対策の強化について ~メディア・行政間での事案発生を受けての緊急対策~」

当時、罰則を含む法整備をまとめる方向性も取り沙汰されていましたが、現行法令の周知徹底にとどまり、今後具体的な方策を検討するということになっていました。当時の様子については小欄の下記記事もご参照ください。

・平成30(2018)年6月25日付 「セクハラ緊急対策」

取りまとめに向けた方向性

その後、平成30(2018)年8月に行われた第4回分科会から検討が行われてきましたが、11月19日に行われた第11回分科会において、下記資料が公表されました。

「女性の活躍の推進及びパワーハラスメント防止対策等の在り方について(取りまとめに向けた方向性)」

その主な内容を整理すると、下表のとおりとなります。

項目 内容
①セクハラの相談をしたことによる不利益取扱の禁止 労働者がセクハラに関する相談を行ったことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することを法律に規定すべきではないか。
②社外の労働者に関するセクハラの防止対策の強化 以下の事項を指針等で明確化すべきではないか。
(1) 社外の労働者や顧客等からセクハラを受けた際の対応
(2) 自社の労働者が社外の労働者に対してセクハラを行わないよう配慮に努めること
(3) 他社が行う事実関係の確認等の措置に協力するよう努めること

類型のおさらい

ご存知の方も多いと思いますが、セクハラは大きく分けて二つの類型があります。

A 対価型セクシュアルハラスメント 職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること
B 環境型セクシュアルハラスメント 職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること

未だにセクハラは職場内で行われたものが対象という誤解が一部残っているようなのですが、類型Aは処分が絡んでくるためほぼ職場内における事案が想定されますが、類型Bは被害者の就業環境の悪化に焦点が当てられており、「職場」の定義については「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成 18 年厚生労働省告示第 615 号)において、下記のとおり定められているところです(職場の定義そのものは類型A・B共通)。

「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。例えば、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等であっても、当該労働者が業務を遂行する場所であればこれに該当する。

社外の労働者に関するセクハラの防止対策の強化

今回示された取りまとめの方向性に話を戻しますが、表の②は、加害者(または被害者)が社外の労働者であるケースも含まれることを「明確化」するということで、解釈を変えるということではないということです。

Ⅰ 同一職場内の場合
Ⅱ 被害者が自社の労働者で、加害者は他社の労働者の場合
Ⅲ 加害者が自社の労働者で、被害者は他社の労働者の場合

これまで、Ⅰについては対策が講じられきたと思いますが、今後はⅡとⅢについても(解釈としては今までも含まれていたのだけれども)明確化されることにより意識して取り組んでいかなければならないということになります。
ただし、Ⅱについては、

(1) 社外の労働者や顧客等からセクハラを受けた際の対応

ということで、さすがに社外の者についてまで事前の対策は講じがたいということなのか事後対応について触れられており、

Ⅲについては、

(2) 自社の労働者が社外の労働者に対してセクハラを行わないよう配慮に努めること

とあるように「配慮に努める」というやや弱含んだ表記になっています。

現時点では、方向性が示されただけですので、今後どのような指針の内容になっていくか動向を待ちたいと思います。


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