もはや「高齢者」ではない?

2018年6月28日 | から管理者 | ファイル: 高年齢雇用安定法.
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平成30(2018)年6月16日付の日本経済新聞朝刊1面に「浮上する70歳定年制」という見出しの記事が掲げられ、少し驚いた方もいらっしゃるのではないかと思います。

この記事の元となっている、前日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太の方針)」の該当箇所を読むと「高齢者雇用の促進」(17ページ)の項目で、

…65 歳以上を一律に「高齢者」と見るのは、もはや現実的ではない。…

としたうえで、以下のような記述があります。

…こうした認識に基づき、65 歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けて環境整備を進める。その際、高齢者は健康面や意欲、能力などの面で個人差が存在するという高齢者雇用の多様性を踏まえ、一律の処遇でなく、成果を重視する評価・報酬体系を構築する。このため、高齢者に係る賃金制度や能力評価制度の構築に取り組む企業に対し、その整備費用を補助する。

こちらを読むとご理解いただけると思うのですが、実は「定年制」という言葉は一言も出てきておらず「継続雇用年齢」の引上げについてのみ言及されており、しかも「環境整備を進める」という若干弱めな表現になっています。
定年については「公務員の定年を段階的に65 歳に引き上げる方向で検討する」という表現のみで、民間企業の定年制については言及されていないのです。

資料を素直に読めば、高年齢者雇用安定法による定年制の規制自体は当面60歳としたままで、65歳までとされている継続雇用制度を引き上げる方向性の中で、まずは個別企業の自主的な取り組みを推進、支援していくことが書かれているように思います。

また、日経の記事の方もその内容をよく読むと「制度設計は難航しそうだ」といった表現が見受けられ、国の規制としての65歳定年制への移行さえ難しそうな状況の中で、なぜ敢えて「70歳定年制」という見出しを使ったのか若干不明な雰囲気が漂っています。

もちろん、国の規制がどうあるべきかという話と、個別企業が国の規制を上回ったところで如何なる人事制度を構築するかという話は別問題というところもあり、業種によっては国の規制の動向にかかわらず視野に入れなければならない企業も少なくないでしょう。

なお、小欄下記記事においても「人生 100 年時代構想会議」での議論を受けて類似の言及をしております。

・平成30年5月18日付 「人生100年時代と高齢者雇用」

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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