令和4年度 雇用保険料率

2022年1月13日 | から管理者 | ファイル: 労働保険徴収法.
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令和4(2022)年度の雇用保険料率についての検討が厚生労働省職業安定分科会雇用保険部会において行われてきました。

令和4年1月12日に行われた労働政策審議会職業安定分科会に「雇用保険部会報告書」が提出され、その内容が固まりつつありますが、報告書の内容を読んでも、報道などの内容を読んでも、すぐにはよくわからない事態になっています。

難易度が増した理由

もともと雇用保険料率は、失業等給付についての部分と、二事業についての部分に分かれていました。
令和2(2020)年度より、二事業についての保険料以外のところが「失業等給付についての保険料率」と「育児休業給付についての保険料率」とに分かれることとなり、内訳が3つに分かれることとなりました。さらに実務的には、労働者負担分と事業主負担分とに分けて考えなければならないので、事態は複雑です。
令和3(2021)年度は改正がありませんでしたので、「育児休業給付についての保険料率」の部分が登場してから初めての改正となります。

令和3年度の雇用保険料率を伝える資料

改正の内容を理解するには、今(改正前)の姿がどうなのかを理解するのがいかなる場合も重要ですが、公的な資料で一番わかりやすいと思われるものが下記です。

・厚生労働省 令和3年度の雇用保険料率について

しかしこの表は、わかりやすさを追求するあまりか「失業等給付についての保険料率」と「育児休業給付についての保険料率」の内訳が載っていないという致命的な内容となっています。
給与計算をするにあたっては内訳を知る必要はなく、労働者負担分が「3/1000」ということさえわかればよいので致命的ではないのですが、今回のように料率が改正されるにあたってどこがどう変わるのかを理解するためには足りない内容となってしまっています。

厚生労働省が描く表に沿って、その内訳を記載すると下表のとおりとなります(一般の事業の場合)。

①労働者負担 ②事業主負担 ①+②
雇用保険料率
(内訳) (内訳)
失業等給付 育児休業給付 失業等給付 育児休業給付 雇用保険二事業
3/1000 1/1000 2/1000 6/1000 1/1000 2/1000 3/1000 9/1000

雇用保険といえば失業保険という常識はすでに崩壊しているのです。

雇用保険部会報告の内容

雇用保険部会の料率改正に関する文言を理解するには、表を下記のように書き換えた方がわかりやすいでしょう。

失業等給付 育児休業給付 雇用保険二事業
労働者負担 1/1000 2/1000 3/1000
事業主負担 1/1000 2/1000 3/1000 6/1000
2/1000 4/1000 3/1000 9/1000

雇用保険部会は、当然ではありますが、労働者負担分と事業主負担分を足した赤字の「計」のところで議論をしています。
まず、失業等給付の部分について、

失業等給付に係る保険料率は、令和4年度においては、令和4年4月から9月までは2/1,000、同年 10 月から令和5年3月までは6/1,000 とすべきである。

とし、次に育児休業給付の部分について、

育児休業給付に係る保険料率については、従前のトレンドで支出の増加が続くことを前提としても令和6年度まで安定的な運営が可能であることが確認できたことから、4/1,000 のままとすべきである。

二事業については、

雇用保険二事業に係る保険料率については、原則3.5/1,000 であるところ、令和3年度までは弾力条項に基づき3/1,000 とされているが、令和2年度の弾力倍率は▲7.65 であり、弾力条項に基づく引下げが可能な1.5を下回る水準となっているため、原則の3.5/1,000 に戻すことが適当である。

としました。

この状況を表にまとめると以下のとおりとなります。

令和4年4月から9月まで

令和4年4月の時点では、二事業の保険料のみが引き上げられますので、給与から控除する労働者負担分の料率に変更はありません。

失業等給付 育児休業給付 雇用保険二事業
労働者負担 1/1000 2/1000 3/1000
事業主負担 1/1000 2/1000 3.5/1000 6.5/1000
2/1000 4/1000 3.5/1000 9.5/1000

令和4年10月から令和5年3月まで

令和4年10月の時点で、給与から控除する労働者負担分の料率が3/1000から5/1000に引き上げられることとなります。

失業等給付 育児休業給付 雇用保険二事業
労働者負担 3/1000 2/1000 5/1000
事業主負担 3/1000 2/1000 3.5/1000 8.5/1000
6/1000 4/1000 3.5/1000 13.5/1000

例年、雇用保険料率が変わるのは年度初めの4月ということが多いわけですが、来年度は10月から給与控除の設定の変更が必要となるということです。この点については、

この点に関して、使用者代表委員から、年度途中での料率の変動に事業主が円滑に対応できるよう、丁寧な周知をはじめとしたきめ細かな方策を行うべきとの意見があった。

という文言も見受けられます。

今後の流れ

労働政策審議会での改正法案要綱の了承を経て、1月17日から召集される通常国会に提出されて、改正へと至る見込みです。


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