緊急事態が解除された後の各種要請の法的根拠

2021年9月29日 | から管理者 | ファイル: 雇用保険法.
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緊急事態が全面解除されても各種要請が残ることについて、その法的根拠は一体何なのか、なぜ要請ができるのかが話題になっています。
一部メディアでは、この点につき自ら「よくわからない」と言っていたり、法的根拠はないなどと言っている場面を見ました。それを調べて正しく伝えるのが役割なのではないかと思うのですが、なかなかそうはならないようです。

新型コロナウィルス感染症対策本部

緊急事態やまん延防止重点措置が発令されているか否かも重要ですが、まず確認しておかなければならないのが、新型コロナウィルス感染症対策本部は令和3(2021)年9月30日をもって解散されるわけではなく、引き続き(当然)活動し続けるということです。
9月28日付でその内容が変更された「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処⽅針」の冒頭部分に、下記のような記載があります。

令和2年3⽉ 26 ⽇、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成 24 年法律第 31 号。以下「法」という。)附則第1条の2第1項及び第2項の規定により読み替えて適⽤する法第 14 条に基づき、新型コロナウイルス感染症のまん延のおそれが⾼いことが、厚⽣労働⼤⾂から内閣総理⼤⾂に報告され、同⽇に、法第 15 条第1項に基づく政府対策本部が設置された。

ちょうどほぼ1年半が経過したということになります。対策本部は、基本的対処方針に定められた事項に基づいてまん延防止のための各種対策を行っていくわけです。

新型コロナウィルスの終息(収束ではなく)はいつなのかと問われれば、新型コロナウィルス感染症対策本部が廃止されたときと言えるのではないでしょうか。

フェーズの整理

以上を踏まえて、対策本部が設置されている状況下のフェーズを整理すると下表のようになります。

新型インフルエンザ等対策特別措置法の要件(抜粋)
A まん延防止 指定感染症にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、全国的かつ急速なまん延のおそれのある
Bまん延防止等重点措置 国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある
C 緊急事態措置 国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある

10月1日からは全都道府県がフェーズAになり「通常の」まん延防止対策を行っていくというわけです。

要請の種類

フェーズBとCの状況下では、罰則つきの強い要請を行うことができますが、フェーズAの状況下でも、罰則は伴わないものの要請を行うことを可能とする条文があります。

(都道府県対策本部長の権限)
第二十四条
9 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。

この条文はとても抽象的なのですが、都道府県知事が必要があると認めれば、さまざまな協力の要請をすることができると言っています。しかし、何でもかんでも要請できるかといったらそうではなく、政府対策本部が定めた基本的対処方針に書かれた内容に沿って、協力の要請が行われていくことになります。
今後この「24条9項」という条項を頻繁に目にすることになるでしょう。

4月にも同様の記事を書いていますので、こちらもご参照ください。

罰則を伴う要請・そうでない要請・協力依頼・要請対象外

雇用調整助成金への影響

雇用調整助成金の現行の特例措置は、11月末までとされていますが、その中で「地域特例」の対象の取扱いがどうなるかという点についてです。

・雇用調整助成金FAQ(令和3年9月15日現在版) (10) 令和3年5月1日以降の業況・地域特例

この点につき、上記FAQには、

10-16 Q 特定都道府県や重点区域以外の都道府県の知事が、独自に行った要請等に応じた場合は特例の対象となりますか

A 対象になりません。特定都道府県や重点区域の知事による要請等である必要があります

とあります。
「特定都道府県」とは緊急事態宣言が適用されている都道府県を指しますので、フェーズAの状況下における24条9項に基づく要請は対象とならないという解釈になっています。9月15日現在の情報であることにご留意ください。


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