緊急事態宣言の解除と雇用調整助成金

2020年5月29日 | から管理者 | ファイル: 雇用保険法.
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緊急事態宣言が令和2(2020)年5月25日付にて全国で解除されました。
しかし、その後も様々な形での自粛要請が各都道府県において行われていますが、これに対して、緊急事態宣言を解除したのだから、もう自粛の要請はできないのではないの?という声が挙がっています。

よくわからない新型インフルエンザ等対策特別措置法

自ら権限を与えられているはずの都道府県知事がよくわからないとメディアでおっしゃっているくらいですから、一般国民がなかなか理解できるはずがありませんが、ざっくりと整理をしてみます。
緊急事態宣言が行われ、対象区域として指定された後の緊急事態措置としての様々な協力要請と、緊急事態宣言下でなくても行うことができる協力要請と、二つがあるということです。

緊急事態宣言 根拠条文 内容
なし 24条9項 必要な協力の要請
あり 45条1項 外出自粛の要請
45条2項 施設の使用の制限等(=休業の要請)
45条3項 要請に応じない者に対する個別の指示

ちょっと不思議な感じがするかもしれませんが、法律の構成としてはざっくりとこのようになっています。
この間、緊急事態宣言下においては、個人に対する外出自粛については45条1項を根拠に行われ、一方、企業や団体等に対する休業要請については当初45条2項に基づく要請が検討されていたものの、まずは24条9項を根拠に行われるケースが多かったようです。比較的緩やかな24条9項に基づいた要請を出し、応じない業者等に対して個別の要請や指示を行っていくという二段がまえの体制が取られていたわけです。

「必要な協力の要請」とは

それでは、緊急事態宣言下でなくとも行うことができる「必要な協力の要請」とは一体何なのでしょう?
その条文は下記のようになっています。

9 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。

45条に比べて、具体的にどのようなことを要請できるかは一切書いておらず、必要とあらば何でも協力を要請できるような感じもします。
緊急事態宣言解除後に残っている各種の要請は、法24条9項に基づいて行われるものと、法的根拠には基づかない「お願い」ベースの要請のようなものとに、各都道府県によって分かれるようです。

雇用調整助成金の支給率への影響

さて前段が長くなりましたが、中小企業に対する雇用調整助成金の支給率は、休業要請があるか否かによって変わってきます。他にも細かな要件がありますが、休業要請があった場合は100%になる可能性があり、そうでない場合は90~94%になるという違いがあります。
ここで、「都道府県知事から休業要請があったか否か」とはどういうことか、すなわち、緊急事態宣言下の緊急事態措置として行われた「休業要請」でないとダメなのかという問題が生じます。ダメではないとして、下記それぞれは対象となるのかという点も気になります。

A 緊急事態宣言解除後の法24条9項に基づく休業要請
B 法的な根拠はない休業要請

この点については、「雇用調整助成金支給要領(令和2年5月19日改正版)」57ページに明確に書かれていて、

加えて、ロ②の要件である特例対象事業所が要請(新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、「特措法」という。)に基づく要請のみでなく、法令の根拠はないものの、業種や施設を指定し、文書で示すなど明示的に要請を行ったものも含む。以下、「要請」という。)を受けているかについては、当該特例対象事業所を管轄する労働局の所在する都道府県(以下、「適用所在地」という。)の知事が要請した施設を運営しているかにより、判断するものとする。

法的な根拠のない要請も含まれるという見解が示されています。
各都道府県のWebサイトに対象となる施設が詳細に掲げられていますので、ご参照のうえ、ご判断ください。

 

 

 


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