「新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について」という名の通達が令和2(2020)年3月17日付にて発出されました。
・厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について(通達)」
通達が発出された経緯
まずは、この通達がなぜ発出されたのかについて確認してみましょう。
厚生労働省の下記サイトの、
・厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症について」
「働く方と経営者の皆さまへ」というカテゴリーに、下記のような記載があります。
マスクの緊急の増産要請など、想定外の需要に対応する企業の皆様から、時間外労働など労働時間の取扱いについてのお問合せを多くいただいていることを踏まえ、3月17日、事務次官から都道府県労働局長に対し、人命や公益の観点からの緊急の業務については、労働基準監督署長の許可又は届出による労働時間の延長ができる場合があることから、この許可又は届出の手続について周知すること等について徹底を図るよう指示しました。
詳細は通達、概要資料をご参照ください。
「時間外労働など労働時間の取扱いについてのお問合せ」をしているのは中小企業だけでなく、大企業も含めたあらゆる企業かと思うのですが、通達の名前は「中小企業等への対応について」となっています。
通達の名称だけ見ると、何か中小企業への特例についての内容なのかなと思ってしまう向きもあるかもしれませんが、大企業よりも中小企業の方が大きな影響を受けやすく、その点をより配慮すべしということに重点が置かれているということであって、大企業も含めたあらゆる企業へ適用される部分も含まれた内容となっています。
通達の内容
その内容を短時間で把握するには、下記の概要についての資料をご覧いただいた方がよいでしょう。
・厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について(概要)」
ご覧いただくとすぐにわかりますが、4項目あるうちの項目1は、まさに中小企業に関するものですが、2~4については企業規模に関わることなく適用される内容です。
そして、2~4についてはすでに小欄でも連日その変更内容を取り上げさせていただいている「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」にて言及されている内容です。
・厚生労働省 「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
整理すると下表のとおりとなります。
通達 | Q&A |
2 労働基準法第 33 条の解釈の明確化 | 5-問3<労働基準法第33条の適用> |
3 1年単位の変形労働時間制の運用の柔軟化 | 5-問1<変形労働時間制の導入や変更> |
4 36 協定の特別条項の考え方の明確化 | 5-問2<36協定の特別条項> |
Q&Aとの相違点に絞って、それぞれ見ていきます。
2 労働基準法第 33 条の解釈の明確化
例示として、
手厚い看護が必要となる高齢者等の入居する施設において新型コロナウイルス感染症対策を行う場合
が加えられています。
また、この通達は厚生労働事務次官から都道府県労働局長に宛てられたものですが、
状況に応じた迅速な運用を図ること。
との表現もあり、実際の許可や届出の場面での柔軟な対応が期待されます。
なお、時間外労働の上限規制の導入に伴い、労働基準法第33条の解釈が明確化された件については、小欄下記記事をご参照ください。
・令和元(2019)年6月24日 「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働」に関する通達
3 1年単位の変形労働時間制の運用の柔軟化
こちらは表現が若干異なるもののほぼ同趣旨のことが書かれています。
4 36協定の特別条項の考え方の明確化
こちらも表現が若干異なるもののほぼ同趣旨のことが書かれています。
これまでQ&Aとして厚生労働省のサイトに掲げられていたものでしたが、
労働局長は、上記1から4までについて、あらゆる機会を通じて、地域の中小企業等への周知を徹底すること。
とあるとおり、今後さらなる周知がなされていくことが確認されました。
小欄においても、引き続きQ&Aの更新内容などを取り上げて参ります。
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