介護休暇・子の看護休暇が時間単位で取得可能となる改正②

2020年2月19日 | から管理者 | ファイル: 育児介護休業法.
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介護休暇・子の看護休暇の時間単位取得を可能とする育児・介護休業法施行規則等の改正内容を3回に分けて解説しています。

対象労働者について

今回の改正を周知する厚生労働省の下記リーフレットを見ますと、

・厚生労働省 「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」

下表のような表現が見受けられます。

改正前 改正後
・1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できない ・全ての労働者が取得できる

1日の所定労働時間が4時間以下の労働者が取得できることとなるという点については間違いないのですが、労使協定を締結することにより除外できる労働者の取扱いは時間単位の場合どうなったのだろう、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そのあたりの、改正が入った部分と改正が入らなかった部分について整理していきたいと思います。

介護休暇・子の看護休暇については、労働者がその取得を申し出たら、事業主は拒むことができないというのが原則です。ただし、一定の労働者については、拒むことができる場合があります。
大きく分けて下記三つのカテゴリーに分けられます。

今回の改正により、改正があるものとないもの、改正そのものは入らないものの今回の改正の影響を受ける項目とがあります。

A 法律上当然に対象外とすることができる労働者(改正あり)
B 労使協定を締結することにより対象外とすることが労働者(改正なし)
C 労使協定を締結することにより対象外とすることができる業務(直接改正はないものの改正の影響を受ける)

それぞれ具体的に見て行きましょう。

A 法律上当然に対象外とすることができる労働者(半日単位)

現行の半日単位の休暇は、1日の所定労働時間が4時間以下の者については取得ができない(=事業主は、申出があっても拒むことができる)こととされていますが、改正後の時間単位での休暇は、取得できることになります。すなわち、取得の申出があったら拒むことができない、ということです。冒頭でご紹介した、厚生労働省のリーフレットに掲げられているとおりです。

B 労使協定を締結することにより対象外とすることが労働者(1日単位・半日単位・時間単位)

現在、労使協定を締結することにより、下記の者を対象外とすることができますが、この点については改正なく、引き続き除外することができます。
・入社6か月未満の者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者

ただし、指針(※)では、入社6か月未満の者についても、一定の日数については、取得できるようにすることが望ましい、とされています。
なお、この点については、1日単位の休暇についても適用されるものです。

※子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針

C 労使協定を締結することにより対象外とすることができる業務(半日単位・時間単位)

AとBは個々の労働者の労働条件により判断するものですが、Cは従事する業務によって、労使協定を締結することにより対象外とできる業務があるというものです。
すなわち、現在指針(※)において、業務の性質や業務の実施体制に照らして、1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務として、下記のような例示がされています。

・国際路線や長距離路線に就航する航空機において従事する客室乗務員、操縦士等
・労働時間の大半を移動しながら行う運輸業務
・長時間の移動を要する遠隔地で行う業務
・流れ作業方式による業務
・交替制勤務による業務

これらはあくまでも例示であって、これら以外は困難と認められる業務に該当しないということではなく、また、これらであれば直ちに困難と認められる業務に該当するものではないとされています。
改正後もこれらの例示は変更がないのですが、半日単位で取得することが困難な業務と、時間単位で取得することが困難な業務は、各企業において異なる可能性があるため、考慮が必要であり、改めて労使協定を締結する必要があるとされています(子の看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A 問2-2)。
企業ごとの現在(=改正前)の状況に応じて見て行きましょう。

X 労使協定により、半日単位での取得をすることができない業務を定めている場合

問2-2にあるとおりですが、この場合でも考慮のうえ、引き続き時間単位について除外する場合でもあっても改めて労使協定を締結する必要があるとされています。
今後、仕事と介護の両立支援に力を入れていきたいと考える企業であれば、逆に、労使協定を締結せずに、すべての労働者を対象とするという判断もあるかもしれません。

Y 労使協定により、半日単位での取得をすることができない業務を定めていない場合

半日単位の取得は何とか対応できると認めてきたが、さすがに時間単位の取得は厳しいという業務があるかもしれません。この場合、施行日に向けて労使協定締結の準備をしなければならないということです。
この場合、半日単位という概念は法律上なくなるものの、引き続き半日単位については認めるようにすることが望ましいとされており、半日単位で取得できることとされていた者について1日単位しか認めないとするのは、労働条件の不利益変更に該当するため、留意が必要です(Q&A 問1-8参照)。

労働条件による適用除外と業務による適用除外の関係を改正前と改正後に分けて整理すると、下表のようになります。

改正前(半日単位)

労使協定にて除外した業務 左記以外の業務
1日の所定労働時間が4時間以下の者 × ×
・入社6か月未満の者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
を労使協定にて除外
× ×
上記以外の者 ×

改正後(時間単位)

労使協定にて除外した業務 左記以外の業務
・入社6か月未満の者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者
を労使協定にて除外
× ×
上記以外の者(1日の所定労働時間が4時間以下の者を含む) ×

(次回に続く)

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