社会保険の統一様式って一体何?

2019年12月25日 | から管理者 | ファイル: 健康保険法, 労働保険徴収法, 厚生年金保険法, 雇用保険法.
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日本年金機構から毎月送られてきます保険料の納付書に「日本年金機構からのお知らせ」という案内が同封されています。
令和元年12月号が届いたところですが、その中で、「労働保険及び雇用保険の届出を同時に提出することが可能となります」という記事を見て驚かれた方も多いのではないでしょうか。
一見、画期的とも思われる「統一様式」が新たに設けられる件なのですが、実はそれほど実務に影響が大きいわけでもなさそうであるという点について触れさせていただきます。
なお、その内容は下記サイトにそろそろアップされると思いますので、ご参照ください。

・日本年金機構 事業主の皆さまへ「日本年金機構からのお知らせ」

また、この件に関する経緯をお知りになりたい方は、小欄下記記事をご参照ください。

・令和元(2019)年6月14日付 「資格取得届などの統一様式が新設される件」

・令和元年7月16日付 「会社設立時の統一様式案が公開されました」

その内容

令和元年12月24日現在、新しい様式が広く公開された様子が見当たらないのですが、改正省令が公布された官報が参考になります。

・令和元年9月27日付 「健康保険法施行規則等の一部を改正する省令」

ページをめくっていくと、新様式のイメージがいくつか掲げられていますが、中には省令に基づく様式でないものもあるため、その全貌は明らかではありません。

また「日本年金機構からのお知らせ」にも下記のとおりあるように、

…届出の契機が同一である手続きを一つづりとした届出様式(統一様式)が、現行の様式とは別に新たに設けられます。なお、現行の届出様式については、令和2年1月以降も引き続きご利用いただけます。

これまでの様式が取って代わられるわけではなく、新たに加えられて、併存していくということになるようです。
そしてそれらの役割の整理としては、従前の様式はこれまでどおり各役所に提出する場合、新統一様式は一つの役所にまとめて提出する場合にそれぞれ利用する、ということになるようです。

電子申請は?

紙の届出のごく一部に統一様式が設けられるのはわかりました。では、電子申請はどうなるのでしょうか。この点については、上記改正省令が公布される前のパブリックコメントへの回答が参考になります。

・パブリックコメント 「健康保険法施行規則等の一部を改正する省令(案)」に関する意見募集の結果について

すなわち、

統一様式について、電子化の予定はございません。

とのことです。
したがって、電子申請にすでに移行している場合は、あまり関係のない改正ということになります。

デジタルファーストの原則に照らすと?

さて、小欄でもたびたび取り上げていますとおり、国は今、行政手続の電子申請化、効率化、簡素化を進めています。デジタルファーストの3原則は下記のようなものでした。

①デジタルファースト
②ワンスオンリー
③ワンストップ

今回の改正は、とにかく③を最優先させた改正と受け止めることができそうです。
①・②についてはどうでしょうか。
①については考慮されていないようです。
②は一見、そんな雰囲気も漂うのですが、資格取得届と資格喪失届は統一様式が設けられるわけではなく、「統一届出を行う際の専用様式がそれぞれ(=社会保険と雇用保険において)設けられる」ということのようです。
興味のある方は上記官報の新様式イメージをご覧になってみてください。同じような情報を2回書かなければならないという手間は変わらないように見えます。
ハローワークにてまだ広く公表されていない実際の様式を見てみたのですが、複写式になっていました。ですので、同じ情報を1回で書くことは可能です。複写式のOCR様式というのを初めて見て、これはOCRとして読み取れるのかと尋ねましたら、読み取れるはずとのことでした。機器の性能が向上しているのでしょう。しかし、電子申請への移行が主流となる中で、見ることが減ってきていた複写式の新様式が出るとは、まさにデジタル化の転換点にいるのだと感じました。(「②は…」以下の取消線からここまで、2020/1/22修正)

なお、会社設立時の届出については、新規適用届・保険関係成立届・適用事業所設置届が1回で書ける、まさに統一様式が設けられるようですが、その様式イメージはこちらです。

・ 第77回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 【参考1-3】様式イメージ

このようなことであれば、②のワンスオンリーが達せられたと言えるように思えますが、会社設立という機会はそれほど頻繁ではないので、「事業主の事務負担の軽減」という恩恵にあずかる機会はなかなか多くはなさそうです。

以上が令和元年12月24日時点で把握できている情報です。令和2(2020)年1月1日施行の改正ですので、年明けにその全貌が徐々に明らかになってくるでしょう。

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら


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