労働基準法第33条に該当する場合

2019年10月16日 | から管理者 | ファイル: 労働基準法.
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令和元年台風19号による被害に遭われた皆さまに、あらためて心よりお見舞い申し上げます。

この度の災害では、あらゆる業種において緊急対応を行う必要が生じ、時間外労働・休日労働を行わざるを得ない状況が多く生じたでしょうし、今後の復旧・復興の局面においても同様の状況が続く業種・業態があることと思います。

労働基準法第33条による時間外・休日労働

労働基準法は、いわゆる36協定を届け出ることによる時間外・休日労働のほかに、災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働を第33条において認めています。

(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
第三十三条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
条文を読みますと、あらかじめ許可を受けることが原則となっていますが、今回のように行政官庁が連休中の場合や、そうでなくても人命救助活動が最優先の場合などは、事後における届出も認められています。

「災害その他避けることのできない事由によつて臨時の必要がある場合」とは

では、どういった場合にこの許可が認められるのかについては、通達にてその詳細が定められているわけですが、令和元(2019)年6月7日付にてその内容に改正が行われました。

災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の一部改正について(昭和22年9月13日発基第17号)(最終改正:令和元年6月7日基発0607第1号)…A

災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の解釈に当たっての留意点について(令和元年6月7日基監発0607第1号)…B

改正という形式を取っていますが、基本的な考え方に変更はなく、現代的な事象等を踏まえて解釈の明確化を図ったものであるとの注記が見受けられます。

Aの肝となる部分を引用します。

(2)地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認めること。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は含まれること。
(3)事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めないこと。例えば、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応は含まれること。

今回の災害で上記のような典型的な場合に該当するケースだけでも各地で多数生じたことが想像されます。

さらにBでは、このような直接対応だけでなく、付随的な業務も含まれることを説明しています。

1 新許可基準による許可の対象には、災害その他避けることのできない事由に直接対応する場合に加えて、当該事由に対応するに当たり、必要不可欠に付随する業務を行う場合が含まれること。
具体的には、例えば、事業場の総務部門において、当該事由に対応する労働者の利用に供するための食事や寝具の準備をする場合や、当該事由の対応のために必要な事業場の体制の構築に対応する場合等が含まれること。

災害対応に直接あたる現場部門だけでなく、これを後方支援する本社管理部門なども該当する場合があることがわかります。

また最後には、掲げられた事由は限定列挙ではなく例示である旨が明確化されています。

4 新許可基準に定めた事項はあくまでも例示であり、限定列挙ではなく、これら以外の事案についても「災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合」となることもあり得ること。

通達改正の経緯

なお、この通達が改正された経緯について詳しくお知りになりたい方は、小欄の下記記事をご参照ください。

・平成30(2018)年8月24日 「時間外労働の上限規制と労働基準法第33条」

【この記事の改正データベース(法改部)はこちら

 


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