判断基準の改正
・初期段階において在宅介護の占める割合が増える中、昭和62年の施設入所の判断基準のみではニーズに対応できない
・介護休業を分割取得できるよう制度が改正されたため、初期段階での介護休業の取得が増えることが想定される
・事業主と労働者との間で判断をする際に、わかりやすいものが求められる
以上のような理由から、常時介護を必要とする状態に関する判断基準が改正されることとなりました。
・旧判断基準 通達(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について) (136ページの次)
・新判断基準(平成29年1月1日~) 常時介護を必要とする状態に関する判断基準
改正の内容
一見、表が変わっただけ?のようでもありますが、そうではなく、判断基準の位置づけが変更になりました。
これまで常時介護を必要とする状態とは「判断基準に掲げられている基準に該当する場合」と、どちらかというと厳格な雰囲気が漂っていました。該当しなければ、介護休業は取得できない、という意味合いに受け止めることができます。
そして、判断基準に明確な記載があるわけではありませんが、介護保険法上の要介護認定のレベルに当てはめるとすると、要介護2~3程度に該当するとされていました。
改正後は、要件が二つに分かれ、まず、
介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
としたうえで、これに該当しない場合でも、表に掲げられている
状態①~⑫のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。
とされました。
すなわち、介護保険制度の要介護状態に該当しない場合でも、介護休業を取得できる場合があり、そのケースが明らかにされた、ということです。
さらに、新判断基準には次のようなことも書かれています。
ただし、この基準に厳密に従うことにとらわれて労働者の介護休業の取得が制限されてしまわないように、介護をしている労働者の個々の事情にあわせて、なるべく労働者が仕事と介護を両立できるよう、事業主は柔軟に運用することが望まれます。
もちろんここまで柔軟にする義務はないのですが、表の基準に該当しないでも両立支援の観点から介護休業の取得をなるべく拒まないようにしてほしい、といった趣旨のことが書かれています。
介護保険法上の要介護状態に該当しないと介護休業は取得できないという誤解
数回に分けてかなり詳細に改正の経緯を見てきたのは「介護保険法上の要介護状態に該当しないと介護休業は取得できない」という誤解が巷で見受けられるため、このような誤解がないようにという趣旨です。では、このような誤解はなぜ生じているのでしょうか。
①何となくそんな感じがする
②通達の改正は周知が弱い
③就業規則や社内ルールの改正対応の問題
何となくそんな感じがする
常時介護を必要とする状態になっているかどうかは、やはり要介護認定を受けているか否かで判断するのでは?と、なんとなく思ってしまいます。
同じ言葉でも、法律によってその定義が異なる、ということは意外によくあることで、なんとなくの思い込みでは判断しないというスタンスが重要に思います。
通達の改正は周知が弱い
法律の改正は、当局からの発信やマスメディアによる報道により、周知されます。また最近は、インターネット等の普及により、以前よりも周知する手段が多様化し容易になってきました。
一方で、通達というのは、基本的には行政機関の内部を拘束するものであるため、たとえ公表されることが前提の通達であっても、改正されたことの周知がなかなか行き渡りません。
公表されることが前提の通達であれば周知は行われますが、報道にまで取り上げられる可能性はより低くなります。
就業規則や社内ルールの改正対応の問題
法律が改正されることにより、就業規則や社内ルールがこれに対応して改正されないと、誤解されて運用され、法令違反となるリスクが高まります。
次回、まとめになります。
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