パワハラ防止対策が改正内容に含まれる「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」が令和元(2019)年5月29日、参議院本会議にて可決、成立し、6月5日付の官報にて公布されました。
・令和元年6月5日付官報 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」
パワハラ防止対策は、第3条の改正「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の一部改正」に含まれます。
今回は、この法案の附帯決議について取り上げます。
・衆議院 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」
・参議院 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」
性的指向・性自認に関するハラスメント
衆議院は七の2、参議院は九の3に、次のように書かれています。
性的指向・性自認に関するハラスメント……も対象になり得ること
実は「性的指向・性自認」については、すでに「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(いわゆるセクハラ指針)に次のように言及がなされています。
なお、職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものである。また、被害を受けた者(以下「被害者」という。)の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。
ちょっとわからなくなるのですが、あらゆるセクハラは性的指向又は性自認にかかわらず当然セクハラとして整理され(改めて指針で言うまでもなく)、「性的指向・性自認に関するハラスメント」(いわゆる「SOGIハラ」?)はパワハラとして整理されるということでしょうか。いずれにしても防止対策は講じなければなりませんが、指針の公表が待たれます。
アウティング
同じ個所に、下記のような記載もあります。
性的指向・性自認の望まぬ暴露であるいわゆるアウティングも対象になり得ること
こちらも一瞬、セクハラの対象となるようにも思われますが、附帯決議によれば、パワハラ指針に明記されるもようです。
同僚や部下からのハラスメント
新たに追加される労働施策総合推進法第30条の2は、パワハラを
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、……」
と定義しているため、一瞬、上司から部下への関係性を想像しますが、そうではなく、衆議院は九、参議院は十一に、
同僚や部下からのハラスメント行為も対象であること
との記載があります。性的指向・性自認に関するハラスメントやアウティングがパワハラとして整理されるのであれば、当然、役職などの立場にかかわらず、対象とされなければおかしなことになってしまいます。
その他あらゆるハラスメント
その他、報道もされているとおりですが、取引先、顧客、フリーランスや就活生等々、あらゆる関係者についてのハラスメントが対象となり、対策が講じられるべきである旨も記載されています。
法律が公布されたことを周知するリーフレット
各労働局によって対応がまちまちのようですが、パワハラ対策の法制化をお知らせするリーフレットが出始めています(茨城労働局の例)。
・茨城労働局 「パワーハラスメント対策が事業主の義務となります!」
右下に小さく「いずれも、詳細については、指針において示される予定です。」とあるとおり、このリーフレットを読んでも具体的にどうすればいいのかは理解できず、指針が公表されるのを待つしかなさそうです。
【この記事の改正データベース(法改部)はこちら】
タグ: パワハラ法制化
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