扶養異動届の押印などが省略できることとなるかもしれない件(協会けんぽの場合)

2019年4月12日 | から管理者 | ファイル: 健康保険法, 厚生年金保険法.
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行政手続コストを削減し、簡素化する動きが進んでいることは小欄でも折にふれて取り上げさせていただいています。
添付書類が省略可能となったり、押印が不要になったり、手続そのものがなくなるといった、今まではあまり考えられなかった(いい意味で)衝撃的なことも実際に起こっています。

この度、この流れに沿った新たな通達が発出されて、話題となっているようです。

・平成31(2019)年3月29日 年管管発0329第7号 適用事業所が提出する届出等における添付書類

添付書類の廃止

まず、下記の場合の添付書類は求めないこととする、とのことです。

①資格喪失届及び被保険者報酬月額変更届の届出の受付年月日より60 日以上遡る場合
②既に届出済である標準報酬月額を大幅に引き下げる場合

①はそうめったにはありませんが、②については、なんで下がる場合だけ必要なの?という疑問が絶えずありましたので、妥当な措置と思います。

署名・押印等の取扱い

(いい意味で)衝撃的なのはこちらです。下記の届出について、下表のとおりの取扱いとするとのことです。

・被保険者生年月日訂正届
・被扶養者(異動)届・第 3 号被保険者関係届
・年金手帳再交付申請書
・養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(特例の申出を行う場合)
・養育期間標準報酬月額特例申出書・特例終了届(特例の終了する場合)

届出用紙による場合 申請者署名欄の本人署名又は押印を省略することとする。
※「申請者本人が当該届出を提出する意思を確認した旨」を各届書の備考欄に記載することが必要
電子申請による場合 委任状を省略することとする。

この通達の宛名は「日本年金機構」宛で、同様の通達が健康保険組合には発せられていないようですので「被扶養者(異動)届・第 3 号被保険者関係届」については、現時点では協会けんぽ加入の企業のみが対象となります。

これらの取扱いはいつから適用となるのか

さて、このような通達は出たものの、事務センターにおける運用が変わっていない、という事態が生じて問題となっているようです。
しかし今一度通達の内容を確認してみると、経過措置に関する重要な下記文言があることがわかります。

なお、この取扱いについては、平成31年9月1日までは、なお従前の例によることができるものとする。

この通達は厚生労働省から日本年金機構に通達されたものですので、日本年金機構による運用の変更の時期は、日本年金機構に委ねられていて、準備が整わない場合は(平成31年9月1日までの間は)今までのままでもいいですよ、ということが書かれています。
事務センターの負担が増える変更ではなく、事務センターも楽になれるはずだからすぐにやってくれてもいいのではと思いますが、文書上はそうなっている、ということです。

特段日本年金機構の肩を持つわけではないのですが、組織が大きいこともあり、そうは言われてもすぐにはできない、という事情もあるのでしょう。
または、日本年金機構と調整したうえで、通達は発出しつつ、周知期間を置いて、施行日は将来の日付を入れておくという手法も取り得たのではないかと思います。
法律の施行日であれば、例えば「公布の日から1年以内の政令で定める日」から施行するといった方法はよくとられるわけで、この手法が通達で用いられた、と受け止めることもできるでしょう。

むしろ、あくまでも行政機関内の内部文書であるはずの通達の公開の時期が早すぎたのではないか、という見方もできるのではないでしょうか。
公開を望んでも公開されていない、公開してくれないケースの方がむしろ多かったわけですが、迅速な公開は、単なるコミュニケーション不足では片づけられない背景があるのかもしれません。

この件に限らずよくある例

実は今回のような件はよくあることで、法改正と施行日は決まっているものの、ハローワークや日本年金機構などの出先機関にとっては、厚生労働省から関連する通達が届いていない(または上司のところには届いているかもしれないが末端の窓口担当まで伝わっていない)のでわからない、対応できない、といった対応になることはやむを得ないことです。
まして今回は法改正が伴わない、通達の発出による運用の変更であるため、唐突感は否めないでしょう。

行政手続に関する簡素化、規制緩和の動きは止めることができず、今後も同様の動きが起こるでしょうが、個別の事案については少し気長に待つ必要があると思います。


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